祈りの幕が下りる時 (阿部寛さん & 松嶋菜々子さん)

abehiroshi13
matsushimananako06

映画『祈りの幕が下りる時』は、東野圭吾さんのミステリー小説「加賀恭一郎シリーズ」の第10作目にあたる同名小説が原作です。
2010年4月期に日曜劇場枠にて放送された連続ドラマ『新参者』、2011年放送のスペシャルドラマ『赤い指』、2012年公開の映画『麒麟の翼 ~劇場版・新参者~』、2014年放送のスペシャルドラマ『眠りの森』に続く最新作です。
阿部寛さんは加賀恭一郎 役で、松嶋菜々子さんは浅居博美 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
東京都葛飾区小菅のアパートで腐乱遺体が発見された。被害者は滋賀県在住の押谷道子(中島ひろ子さん)で死因は絞殺だった。殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫は行方不明になっていた。
捜査一課の松宮脩平(溝端淳平さん)は、殺害時期や現場が近いことから、新小岩の河川敷で発生したホームレス焼死事件との関連性を疑う。しかし身元不明の焼死したホームレスと越川のDNAは一致しなかった。
松宮は押谷道子が東京に来た理由を探るために滋賀県に行き、道子の営業先の老人ホームで有力な手掛かりを得る。どうやら道子は、中学時代の同級生で舞台演出家の浅居博美(松嶋菜々子さん)を訪ねるために上京したようだ。
松宮が博美に話を聞きに行くと、道子と会ったことは認めたもののすぐに別れたという。実際、犯行時刻には博美は日本橋の明治座から一歩も出ていなかった。
いよいよ捜査に行き詰った松宮は、従兄で日本橋署の刑事である加賀恭一郎(阿部寛さん)に会いに行く。博美のところで見かけた写真の中に恭一郎の姿があったからだ。松宮から知人である博美についての意見を求められる加賀だが、初めは管轄違いということもあって捜査の助言を送る程度だった。しかし、あることを知って激しく動揺する。それは、殺害現場である越川の部屋にあったカレンダーに、日本橋にある橋の名前が月毎に書き込まれていたということだった…。
冷静沈着で鋭い人間観察眼と洞察力を持ち、ただ犯人を捕まえるだけではなくて犯人の苦悩に寄り添い諭していく加賀恭一郎を主人公とした『新参者』シリーズ。
本作では、これまで詳細が語られなかった加賀の母親の失踪理由やその行方・顛末、そして母親と関係するある人物をめぐる事件が紐解かれました。それは、加賀が優秀でありながら依然として所轄である日本橋署の刑事のままでいる理由と関係がありました。
物語のキーマンは、美しき舞台演出家・浅居博美でした。元女優である博美は、かつて加賀と会ったことがあり、そのことが事件を解くカギにもなりました。
加賀の父・隆正(山崎努さん)が生前、担当看護師・金森登紀子(田中麗奈さん)に話していた「あそこ(=あの世)からなら、好きなだけあいつ(=加賀恭一郎)を眺めていられる。肉体なんて邪魔なだけだ」という言葉も印象的でした。その言葉を登紀子から聞いた加賀は、最初はそのことを認めようとしませんでしたが、今回の事件の真相を追ううちに「親というのは子どものためだったら自分の存在を消せるのかもしれない」と考えるに至りました。シリーズを通して触れられていた加賀の父との確執ですが、ようやくきちんと父親と向き合うことができたようでよかったです。本作でも“嘘は真実の影”という言葉が心にしみました。
原作小説自体、“東野圭吾版『砂の器』”と評されていましたが、映画である本作もまた松本清張作品の『砂の器』を彷彿とさせる仕上がりとなっていました。ちなみに本作の監督を務めた福澤克雄さんは、中居正広さん主演の2004年の連続ドラマ『砂の器』で演出を務めていました。
エンドロールでは、日本橋人形町界隈の下町情緒あふれる街並みが映し出され、テレビシリーズに登場した田倉慎一(香川照之さん)、上川菜穂(杏さん)、米岡彰文(恵俊彰さん)などがカメオ出演していて懐かしかったです。日本橋署の加賀恭一郎としては本作が最終章となります。東野圭吾さんが続きを書き下ろしてくれたら、この『新参者』シリーズの続編も実現することでしょう。捜査一課に復帰した加賀の今後の活躍も観てみたいと思いました。