バクマン。 (佐藤健さん & 神木隆之介さん)

satohtakeru10
kamikiryunosuke08

映画『バクマン。』は、週刊少年ジャンプに連載された原作・大場つぐみさん、作画・小畑健さんによる同名漫画を、『モテキ』などの大根仁監督が実写化した作品です。
佐藤健さんは真城最高 役で、神木隆之介さんは高木秋人 役で出演しています。
先日、試写会で鑑賞しました。明後日3日から全国公開されます。
●導入部のあらすじと感想
高校生のサイコーこと真城最高(佐藤健さん)は、優れた画力を持ちながらも将来に夢を持たず、ただ流されて普通に生きていくだけの日々を送っていた。サイコーが幼少の頃に絵を褒めてくれた叔父(宮藤官九郎さん)は、週刊少年ジャンプに『超ヒーロー伝説 バックマン』を連載してアニメ化もされたマンガ家・川口たろうだが、8年前に結局は人気が落ちて連載打ち切りとなり、過労によって亡くなった。そのことがサイコーの心に暗い影を落としていた。
ある日。サイコーは、クラスメイトの秀才・シュージンこと高木秋人(神木隆之介さん)にある落書きを見られる。それは、サイコーが想いを寄せる亜豆美保(小松菜奈さん)の似顔絵だった。シュージンはサイコーの画力に感動し、「俺と組んでマンガ家になってくれ。俺が原作でおまえが作画」という提案を持ちかける。サイコーは、叔父のこともあってか、初めはその提案を拒絶。しかし、声優を目指している亜豆と、「マンガ家として、声優として、お互いの夢が実現したら結婚する」という約束をしたことから、プロのマンガ家になることを決意する。
かくしてサイコーは叔父が使用していた仕事場を使って、週刊少年ジャンプに持ち込みするためにシュージンと共に日々原稿と格闘するのだった…。
週刊少年ジャンプのいわば三大テーマである「友情、努力、勝利」が、本作でもきちんと盛り込まれていました。マンガ家の道を誘ってサイコーを引っ張るシュージンと、熱意を内に秘めて夢や恋のために勝負所で爆発させるサイコーとの友情はもちろんのこと、ライバルや編集者たちとの関係性も興味深かったです。10年に1人の逸材と言われている天才高校生マンガ家・新妻エイジ(染谷翔太さん)とのライバル関係。一本気で情熱的な性格で過激なヤンキーバトル漫画を描く福田真太(桐谷健太さん)や、変わり者でグラフィックデザイナーから転向したという異色のギャグマンガ家・平丸一也(新井浩文さん)、15年間色々なマンガ家の下でアシスタントをしてきた苦労人で背景画等の技術が凄い中井巧朗(皆川猿時さん)たちとの戦友のような関係。週刊少年ジャンプ編集者でサイコーたちの担当となる服部哲(山田孝之さん)との二人三脚の関係。面白さ絶対主義でサイコーの叔父・川口たろうの編集担当だった過去を持つ週刊少年ジャンプ編集長・佐々木(リリー・フランキーさん)との因縁めいた関係。そして、声優の道を突き進む亜豆と彼女に追いつこうとひたむきに頑張るサイコーのほのかな恋愛関係などが物語に深みを与えていました。
個人的にツボだったのは、藤子不二雄A先生の『まんが道』を彷彿とさせるサイコーたちと福田たちの関係です。手塚賞の授賞式終わりに新人マンガ家が集まって夢を語り合うシーンは、同作のトキワ荘の集まりを彷彿とさせました。チューダー(=焼酎のサイダー割り)らしきものが置いてありましたし、中井の作ったキャベツ炒めもまさにトキワ荘メンバー恒例のメニューです。サイコーの叔父・川口たろうが言っていた「おれの恋人はまんがや!」は、『まんが道』の主人公・満賀道雄の名言です。川口たろうの仕事場の机の上には、その場面の漫画の切り抜きが写真立てに飾られていました。そして、本棚には藤子不二雄ランド『まんが道』の本が並んでいました。本作の主題歌であるサカナクションの「新宝島」というタイトルは、マンガ家・手塚治虫先生の出世作『新宝島』よりインスパイアされたとのこと。その漫画は、前述の満賀道雄が作中で衝撃を受ける作品でもあります。このように『まんが道』へのオマージュがそこかしこに散りばめられていてよかったです。
サイコーとシュージンが学校に通いながらあの絵のクオリティの高さで週刊誌に連載していて、アシスタントがいないというのはあり得ないと思いましたが、終盤の展開で“友情”を強調するためにわざとそうしたのでしょう。ジャンプ編集部やマンガ家の仕事場の再現度は凄いと思いました。ペン入れの際の、ペン先が原稿用紙の上を走る音も心地よかったです。
プロジェクションマッピングによる漫画執筆シーンも凄かったです。視覚的には地味な漫画の執筆作業を、プロジェクションマッピングを駆使することによって“動き”や“疾走感”が加わって、見応えのあるものになっていました。連載漫画の人気順位争いにおけるサイコー&シュージンと新妻エイジの対決では、CGを駆使することによって、マンガ家及び誌面の漫画作品同士の戦いが表現されていて“躍動感”がありました。
エンドロールも遊び心があって面白かったです。一見すると本棚にコミックが並んでいるだけなのですが、ジャンプの歴代コミックのタイトルをもじって職種が表現されていて、作者名のところにスタッフの名前がありました。ところどころ、原作・大場つぐみさん&作画・小畑健さんのコミックとガモウひろしさんのコミックがもじらずにそのまま置いてありました。やはり、大場つぐみさんとガモウひろしさんは同一人物という説は本当ということでしょうか。本作に登場する『超ヒーロー伝説 バックマン』も、ガモウひろしさんの『とっても!ラッキーマン』を彷彿とさせました。

page top