モテキ (森山未來さん)

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森山未來さんが主演を務める映画『モテキ』は、久保ミツロウさんの同名漫画を実写ドラマ化して話題を呼んだテレビ東京系列の深夜ドラマ『モテキ』の劇場版です。監督・脚本はドラマ版と同じ大根仁監督で、原作は久保ミツロウさんが映画のために、ドラマ版の1年後を舞台に書き下ろした完全オリジナルストーリーです。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
金なし夢なし彼女なしでヘタレな藤本幸世(森山未來さん)は、前の“モテ期”から1年後、相変わらず出会いの1つもない味気ない人生を送っていた。
派遣社員を卒業するべく、一念発起して話題のニュースサイト・ナタリーの面接を受けた幸世。面接官の1人はなんと知人である墨田卓也(リリー・フランキーさん)だった。なんでも墨田は映画『ソーシャル・ネットワーク』を観て、マーク・ザッカーバーグに憧れて会社を作ったらしい。童貞の話題で面接の雲行きが怪しくなる中、幸世は、会社に乗り込んできた墨田の元カノと今カノの揉め事に巻き込まれて腹部を刺されてしまう。そして薄れゆく意識の中、幸世は好きな人とセックスをしないと死んでも死にきれない、せめてもう1回だけモテ期が来て欲しいと強く願う。
3カ月後、“モテ期アゲインパワー”でなんとか生還した幸世は、ニュースサイト・ナタリーで一応ライターとして働いていた。
そんなある日、幸世はTwitterで出会った人と意気投合して一緒にお酒を飲むことになる。Twitterのアイコンで相手は男性だと思い込んでいた幸世だったが、やって来たのは女性で、殺人級のキュートな笑顔を持つ松尾みゆき(長澤まさみさん)だった。みゆきには彼氏がいることを知り、期待してはだめだと葛藤する幸世だが、みゆきへの想いは日ごと募るばかり。そして、幸世はこれまでの自己完結恋愛パターンにハマらないと固く心に誓い、「俺なんか」という自己否定も禁止して恋愛を楽しむことにするのだった…。
ドラマ版と同じように4人の美しい女性が登場するのですが、厳密に言うと、映画では恋愛関係で幸世と絡むのは2人です。Twitterで出会った雑誌編集者のみゆきとその友人でOLの枡本るみ子(麻生久美子さん)の2人と幸世の恋愛を軸に話は進んでいき、そこに幸世の先輩社員・唐木素子(真木よう子さん)とガールズバーの店員・愛(仲里依紗さん)がかかわってくるといった感じです。素子と愛は、幸世に“現実”を浴びせかけるといった役割を果たしていて、恋に翻弄されている幸世にはなかなかいい薬になります。特に、自分と真逆なみゆきのイケメン彼氏に逆上する幸世に対して言い放たれた素子の言葉は、理不尽ながら納得させられてしまうもので印象的でした。
印象的といえば、墨田の名言(迷言?)です。「彼氏がいないということは世界中がライバルなんだ。でもな、彼氏がいるってことはライバルはたった1人なんだ」という言葉は、墨田自身の性格もあらわれていて妙に感心してしまいました。
こだわりのユニーク映像と音楽もやはり良かったです。ドラマ版でもPerfumeの楽曲に合わせた幸世のミュージカルシーンがあったのですが、映画ではさらにスケールアップしています。「Baby Crusing Love」が流れてPerfumeが実際に登場し、幸世が息ぴったりの踊りを見せ、幸世の天にも昇る気分が見事に表現されています。
ドラマ版同様、歌詞の内容が物語のシチュエーションとリンクしていたり、幸世のハイテンションなモノローグも面白いです。ドラマ版を観た人にとっては、オム先生こと小野坂オム役で登場した浜野謙太さんが、映画では在日ファンクのボーカルとしてちらっと登場したのも嬉しい演出でしょう。ちなみに原作者の久保ミツロウさんが描いた映画用のネームでは、ドラマ版のヒロインである亜紀(野波麻帆さん)、いつか(満島ひかりさん)も登場しているそうです。でも、台本打ち合わせの最終段階で「映画はドラマの続編だが、独立した作品にしたい」という理由で2人が物語に登場する設定そのものが破棄ということになったようです。ドラマファンとしては残念ですが、間口を広げるという意味では正しい選択なのかもしれません。
相手が自分を好きになってくれていることを確信するまでは踏み込めず、相手の気持ちが分からなくなるとすぐに自分から身を引いて逃げてしまっていた幸世。そんな幸世は、果たして今度こそ成長して本当の恋愛を手に入れることができるのでしょうか。興味のある方は是非その目でお確かめください。

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