人類資金 (佐藤浩市さん & 森山未來さん & 香取慎吾さん)

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映画『人類資金』は、『亡国のイージス』『北のカナリアたち』などの阪本順治監督がメガホンを取って、原作の福井晴敏さんと共に脚本も担当しています。
佐藤浩市さんは真舟雄一 役で、森山未來さんは石優樹 役で、香取慎吾さんはM 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
終戦の日、日銀の地下倉庫から莫大な金塊が姿を消した。戦後の混乱と日本の復興を糧に膨れ上がったその資産の名は“M資金”と呼ばれた。約70年の歳月が流れ、詐欺師の真舟雄一(佐藤浩市さん )は、企業相手にそのM資金をネタにした架空の融資を持ちかけて手数料を騙しとる詐欺を行っていた。そんな彼の前に石優樹(森山未來さん)という青年が現れ、財団の者が待っていると告げる。初めは取り合おうとしない真舟だったが、財団の名前が「日本国際文化振興会」であると聞いて興味を持つ。かつてM資金の謎を追って車に轢かれて亡くなった父の取材ノートの中にあった名前と同じだったからだ。
石が指定したビルを訪れた真舟は、高遠美由紀(観月ありささん)が率いる防衛省秘密組織の一団に襲われる。後から現れた石に助けられて、ビルの下の地下通路を通って逃げた真舟は、そのままPDAのベンチャー企業代表・本庄一義(岸部一徳さん)に引き合わされる。本庄は真舟に10兆円のM資金を盗み出すよう依頼し、報酬は50億円だと言う。半信半疑の真舟の前に、今度は“M”と名乗る本当の依頼者(香取慎吾さん)が現れ、その経緯を説明して改めて依頼するのだった…。
M資金を巡って信念と欲望が渦巻く人間模様が描かれていました。
最初の見どころはM資金奪取計画でしょう。真舟が、ロシア・サンクトペテルブルクの“財団”直轄のヘッジファンド「ベタプラス」マネージャー・鵠沼英司(オダギリジョーさん)の懐に言葉巧みに入り込んで騙していく過程とその顛末が面白かったです。
そして、一番の見どころは、石の故郷・カペラ共和国にかけられたある嫌疑を晴らすための戦いでしょう。そこには本作のテーマも深く絡んでいました。金融操作で見せかけの繁栄を維持しようとする“ルール”を中心に動いている世界。しかもそれは地球上のほんの一握りの人間にのみ富を集中させるシステムになっています。本作はそんな金融資本主義の行き過ぎ、ひいてはマネー至上主義に警鐘を鳴らしています。石が国連で英語のスピーチを行う場面が印象的でした。
サスペンスあり、アクションあり、経済について考えさせられるテーマあり、撮影も米国やロシア、タイで行われるなど、大作感のある作品でした。惜しむらくは、時間の都合上仕方がなかったことでしょうけど、人物描写や物語の説明が足りないと感じられた点です。映画と同時並行で書き下ろしを開始された福井晴敏さんの同名小説の方はなかなか深く描かれています。全7巻で完結となる予定で、現在4巻まで発売されています。