- 2007年6月15日
映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』は、今年10月期にTBS系列にて放送された連続テレビドラマ『大奥~誕生[有功・家光篇]』の次世代を描く続編作品です。原作は同じく、よしながふみさんの漫画『大奥』です。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
男子にのみ感染する謎の疫病によって男が激減し、男女逆転の世となってから30年。綱吉(菅野美穂さん)を五代将軍にいただき徳川の治世は最盛期を迎えていた。時は元禄、戦乱の世も今は昔となったこの時代に、江戸城大奥では男たちが激しい派閥争いを繰り広げていた。綱吉の父・桂昌院(西田敏行さん)、綱吉との間に松姫をもうけた側室・伝兵衛(要潤さん)に対するは、正室で公家出身の御台所・信平(宮藤官九郎さん)。彼は京都からやはり公家出身の右衛門佐(堺雅人さん)を呼び寄せ、綱吉の側室に据えて、対抗派閥である桂昌院・伝兵衛から大奥内での権勢を引き戻そうと企んでいた。
すると、右衛門佐はその才覚と野心でまもなく長年空席だった大奥の最高権力である大奥総取締に就任。周囲の嫉妬をよそに権勢を手に入れていく。
そんなある日、松姫が急逝。たちまち後継者問題が勃発し、大奥の男たちの権力争いにも拍車がかかっていくのだった…。
松姫を失って以来、世継ぎに恵まれない綱吉。焦る父・桂昌院は、そんな綱吉に対して干渉を強めていきます。運命に翻弄され、生きる気力をも失い、絶望の淵に立たされる綱吉に手を差し伸べたのは、人知れず綱吉を見守り続けていた右衛門佐でした。右衛門佐が綱吉に訴えかけた「生きるということは、男と女ということは、ただ女の腹に種をつけ子孫を残し、家の血を繋いでいくことではありますまい」という言葉が印象的でした。
また、本作の面白さは、親子・男女の関係、権力争い、愛憎劇を絡めた人間ドラマだけではありません。シリーズ共通でいえることですが、男女逆転に関すること以外は史実に沿った物語になっている点も興味深いです。例えば、本作で登場する「生類憐れみの令」。歴史の一説では、徳川綱吉が跡継ぎのないことを憂い、母・桂昌院が寵愛していた隆光僧正の勧めで出したとされています。本作でも、男女の置き換えはあれど、それに近い描写がありました。その際に、前作『大奥~誕生[有功・家光篇]』のエピソードが絡めてあって、テレビドラマを観た者としてはなんだか嬉しかったです。桂昌院の青年期である玉栄(田中聖さん)が登場しました。
前作がテレビドラマだっただけに、本作もテレビドラマでよかったような気がしないでもないですが、絢爛豪華な元禄時代を表すセットや衣装、京都周辺の世界遺産や重要文化財での撮影は、映画でなければ実現できなかったのかもしれません。確かに映像に重厚感がありました。