映画 任侠ヘルパー (草なぎ剛さん)

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映画『任侠ヘルパー』は、フジテレビ系列のテレビドラマ『任侠ヘルパー』の劇場版であり、そのテレビシリーズの続編にあたります。
SMAPの草なぎ剛さんは、テレビシリーズに引き続き、主人公・翼彦一 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
翼彦一(草なぎ剛さん)は、暴力団「隼会」を抜けて、堅気となってコンビニでアルバイトをしていた。そんな中、コンビニに強盗が入り、彦一は難なく撃退するが、強盗が老人と知ると、店の金を渡して足を洗うよう叱咤して逃がしてやる。その事件や元極道であることが店長に知られた彦一は、警察に引き渡され、警察の自分に対する扱いの悪さに腹を立てて大暴れした結果、刑務所送りになってしまう。
彦一は、獄中でコンビニ強盗の老人・蔦井雄三(堺正章さん)と再会する。元極道であった蔦井は彦一に、コンビニの件の礼として出所後に自分の名前を出して、自分と兄弟分だった「極鵬会」の組長・朝比奈道俊(宇崎竜童さん)を頼るよう指南する。その後、獄中で蔦井は亡くなり、出所した彦一はコンビニのアルバイトで一緒だった山際成次(風間俊介さん)から子分にしてほしいと頼まれる。成次は彦一の男気に惚れたのだ。そこへ父・蔦井雄三が獄中で世話になったことを聞いていた葉子(安田成美さん)が、礼を言いに彦一のところへ挨拶に来る。しかし、葉子はヤクザを憎んでいて冷たい態度だった。
成次という舎弟もどきができたものの、身を寄せる場所のない彦一は、蔦井のツテを頼って「極鵬会」に接触する。元極道であることの生きづらさを感じていた彦一は、再び裏の仕事に手を染めることにしたのだ。組長・朝比奈の指示で若頭・日吉雄喜(杉本哲太さん)から与えられた仕事は、老人相手の闇金と、その闇金で破産した老人たちを劣悪な老人介護施設に放り込み、生活保護や年金をせしめるというものだった…。
最初は淡々と裏の仕事をこなしていた彦一ですが、老人を食い物にする状況に次第に苛立ちを募らせ、認知症を患う母・露子(草村礼子さん)を抱える葉子たち家族の救いを求める心の叫びを感じ取り、ついに立ち上がります。介護施設「うみねこの家」の立て直しに動き出したのです。そんな彦一の前に立ちはだかるのが、貧困ビジネスの撲滅を公約に掲げる市議会議員・八代照生(香川照之さん)と、老人を金づるとしか思わず、極道としてのメンツやプライドよりも利権などの経済を優先する「極鵬会」です。そんな彼らの三つ巴の争いが見応えありました。
彦一自身もそうですが、彦一と出会うことによって、葉子、照生が変化していくところも興味深かったです。過酷な日常に疲れて悔し涙まで流していた葉子が、彦一のおかげで笑顔を取り戻し、生きていくのも悪くないと前向きになっていく過程が実に良かったです。地盤・看板にとらわれて、いつも途中で諦めてきた照生が、彦一のおかげで自分の過ちに気づき、こだわりを捨てて断固として不正と戦い続ける覚悟を決めたところも良かったです。ラストで傷だらけになった彦一と照生の間に芽生えた奇妙な友情も、面白くもあり清々しかったです。清々しかったといえば、成次とキャバ嬢・仙道茜(夏帆さん)の純情恋物語もいい味を出していました。
テレビシリーズのファンでもある私は、四方木りこ(黒木メイサさん)の登場も嬉しかったです。りこは以前、若頭の地位を巡り、彦一とともに介護施設でヘルパーとして働いていたことがある人物です。りこは彦一に対して密かに恋心を抱いていたのですが、そうした背景を知った上で本作を観ると、りこの微妙な反応も感じられて面白いです。
本作はリアリティを求める人や明確な答えの提示を求める人には、物足りなさを感じるかもしれません。でも、疲弊する介護者、暴利をむさぼる悪質な貧困ビジネス、行くあてのない老人たちなど、社会が抱える闇の部分にスポットを当てているので、いろいろと考えさせられることも多いでしょう。そうかと言って社会問題だけのお堅い話というわけでもありません。“弱きを助け強きを挫き、命を捨ててでも義理人情を貫く”という「任侠道」を胸に奮闘する彦一の物語としても楽しめると思います。“本物”を追い求める彦一の活躍をまた観たいです。