- 2012年9月10日
織田裕二さんは、現在公開中の映画『アマルフィ 女神の報酬』に黒田康作 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
クリスマス目前のイタリア・ローマ。テロの予告を受け、外交官・黒田康作(織田裕二さん)が降り立った。黒田はテロから邦人を守るために派遣されたのだ。
黒田が赴任する日本大使館では、G8外務大臣会合に参加する川越亘外務大臣(平田満さん)がイタリアを訪問するため、その準備に追われていた。
そんな中、美術館で1人の日本人少女・矢上まどか(大森絢音さん)が失踪する。黒田はまどかの母・紗江子(天海祐希さん)のもとにかかってきた電話を受けたことで事件に巻き込まれていく。
警察に連絡をして犯人との取引に応じることにした黒田。しかし、警察の包囲網をかく乱するかのように犯人は次々と取引場所を変更する。警察の判断ミスにより、警察の介入が犯人グループにばれたためか、取引が中止になってしまう。
ショックを受けて取り乱す紗江子のもとに、紗江子に好意を寄せているらしい商社マン・藤井昌樹(佐藤浩市さん)が駆けつける。紗江子はいくらか落ち着きを取り戻し、藤井は黒田に「彼女の力になってやってください」とお願いをし、仕事に戻る。
警察や黒田の対応に不信感を募らせ、1人で行動しようとする紗江子。それを知った黒田は、紗江子ために、外交官には捜査権限がないと知りながら、独断での調査を開始する。案の定、イタリア警察から内務省を通じてクレームが入ってしまい、大使館からとがめられるが、邦人を守るのが自分の仕事という信念を持つ黒田は動じない。
黒田は事件の鍵が南イタリアの美しい港町・アマルフィにあることを突き止める。そして事件は、イタリア大統領やG8首脳陣などを巻き込んだ大規模な連鎖テロへと発展していくのだった…。
美しい景色、豪華なキャスト、ソプラノ歌手であるサラ・ブライトマンが出演し、主題歌も担当するなど、映像・音楽が素晴らしかったです。
犯人は登場した途端に分かってしまいましたが、犯人の目的がなかなか見えてこなくて、興味を惹きました。体裁ばかり気にしている日本大使館の内幕もある意味リアリティがあって面白かったですし、クールでアウトロー的なキャラクターの黒田を織田裕二さんは見事に演じていると思いました。
残念だったのは、意外な展開を狙ったせいか、肝心なところで突っ込みどころが多かったことです。私のようなドラマ好きの人には許せる範囲だとは思いますが、映画好きの人からすると微妙かもしれません。場面の繋ぎ目がブツンと切れるような演出も、私好みではありませんでした。
映画でも触れられていますが、“アマルフィ”は、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが愛する妖精の死を悲しみ、彼女を永遠なものとするために世界で最も美しい場所に亡骸を埋めて街をつくって、彼女の名をつけたという伝説が残っているそうです。犯人の想いもそれに通ずるものだったのかもしれません。だからわざわざリスクを犯してまでアマルフィで実行したのでしょう。
副題の“女神の報酬”の意味については、いろいろな受け取り方があると思います。上記のアマルフィの伝説に絡めて受け取ることもできますし、私個人としては、矢上紗江子が「私とまどかにしたことを生きて償ってほしい」という犯人に対するメッセージを黒田に託したところにあると思いました。犯人にひどいことをされたにもかかわらず、犯人の死を望むのではなく、罪に対する償いを求めるものの、生きていてほしいと願った紗江子。その思いが結果的に犯人の心を動かし、復讐を遂げたら自ら命を絶つという当初の計画をやめさせることができました。そういえば、黒田にとっては、最後の方で紗江子が見せた笑顔が報酬になっているのかもしれませんね。
シリーズとして、謎めいた外交官・黒田康作の他の活躍も観てみたい気もします。その時には是非、黒田の直属の上司である外務事務次官・片岡博嗣(中井貴一さん)に、電話の声ではなく実際に登場してほしいです。