カールじいさんの空飛ぶ家 (原題:UP)

carl
『カールじいさんの空飛ぶ家』は、『モンスターズ・インク』の監督ピート・ドクターと『ファインディング・ニモ』の脚本家ボブ・ピーターソンが共同で監督を務めた3Dアニメーションです。ピクサー初であるディズニーデジタル3D版を鑑賞しました。
●導入部のあらすじと感想
冒険好きな少年のカール・フレドリクセンは、ある空き家で同じく冒険好きな少女のエリーと出会う。意気投合した2人は、やがて愛を育み結婚し、出会った空き家を新居とした。2人の間に子どもは授からなかったものの、二人三脚で同じ年月を重ねて苦楽を共にして幸せに暮らす。2人には、南米にある“伝説の場所”パラダイス・フォールで冒険をするという子どもの頃からの夢があった。日常に追われてその夢は叶えることができずに老いてしまったが、せめて旅行に行こうと、カールが南米行きの航空チケットを購入した矢先、エリーは病に倒れ亡くなってしまう。
エリーとの思い出がつまった家にひとりっきりで暮らすカールは、立ち退き勧告で家を奪われそうになった時、エリーとの約束を果たすため、大量の風船を家にくくり付け、家ごと大空へ飛び立ち、旅に出る。ところが、ボーイスカウトの少年のラッセルが、「老人の手伝いをする」という任務を遂行するため、家に紛れ込んでいたのだった…。

なんといっても一番印象的なのは、冒頭のカールとエリーの出会いから別れまでを描いた追憶のシーンです。カールの亡き妻への思いが伝わってきて、切なさで胸がいっぱいになりました。
その後は打って変わって冒険活劇。人や物が派手に画面から飛び出すといった3Dならではの演出はほとんどありませんでしたが、画面の奥行きや繊細さが感じられて良かったです。ラッセルがジャングルで見つけた怪鳥のケヴィン、犬語翻訳機をつけて人間の言葉を話すことができる犬のダグなど、面白い動物たちも登場します。ラッセルや動物たちを最初は邪険にしていたカールが、一緒に旅を続けていくうちに心を通わせていく姿も胸を打ちました。
子どもの頃にカールやエリーが憧れていた冒険家のチャールズ・F・マンツが再び登場したのには驚きました。ハラハラドキドキの展開を単純に楽しむのもいいですし、この物語に込められたメッセージを味わうのも良いでしょう。カールはこの旅を通じて、あることに気づきます。それは、エリーが子どもの頃にパラダイス・フォールのスクラップを集めて作った「わたしの冒険ブック」にありました。スクラップの続きには、カールとエリーの思い出の写真がたくさん貼られていて、人生の冒険は日々の小さな出来事であると語っているようでした。「人生にリハーサルはない。だから、毎日を悔いなく生きるべきだ」というメッセージが感じられ、胸が熱くなりました。テニスボール付きの杖や缶バッジなどの小道具の使い方も見事で感心しました。

物語に直接的には関係ないのですが、『カールじいさんの空飛ぶ家』の製作総指揮を務め、他のピクサー作品の多くでも監督・製作総指揮を務めているジョン・ラセターが、テレビのインタビューで興味深いことを話していたので記録しておきます。
○素晴らしいアニメーション映画に必要な要素
①先が全く予測できない物語。
②印象的で魅力的な登場人物。
③信じられる世界を舞台にする(現実的では無くても美しく信じられる世界)。

同時上映の短編アニメーション『晴れ ときどき くもり』(Partly Cloudy)は、コウノトリがあらゆる動物の赤ちゃんを運んできていて、どこから赤ちゃんを連れてくるかの秘密は雲の中にありました…という物語です。微笑ましくて面白くて心が癒されるような作品でした。

スポンサーリンク