イニシエーション・ラブ (前田敦子さん)

maeda08
映画『イニシエーション・ラブ(INITIATION LOVE)』は、乾くるみさんの同名小説を実写化した作品です。『20世紀少年』シリーズなどの堤幸彦監督がメガホンを取っています。
前田敦子さんは、成岡繭子 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
1980年代後半、バブル最盛期の静岡。理系の大学生・鈴木は、ある日、友人に誘われ気乗りしないまま合コンに参加。その席で、歯科助手のマユこと成岡繭子(前田敦子さん)という女性と出会い、やがて付き合うことになる。奥手で恋愛経験がなかった鈴木だが、華やかなマユにふさわしい男になろうと、髪型や服装に気を使って自分を磨く。
甘い毎日を過ごす2人だったが、就職して東京本社への異動が決まった鈴木(松田翔太さん)は、静岡にマユを置いたまま上京することになる。それでも鈴木は週末ごとに東京と静岡を行き来してマユとの恋愛関係を続ける。
しかし、東京の魅力的な同僚・石丸美弥子(木村文乃さん)との出会いに鈴木の心は揺らぎ始めるのだった…。

原作小説は、甘く切ない一見純粋なラブストーリーが、最後の2行で驚愕のミステリーへと変貌するとして話題になった作品です。今回の映像化にあたり、小説のトリックを映画にどう置き換えるかは、原作者の乾さんからアイデアをもらって、それをもとに堤監督と脚本家・井上テテさんが肉付けをしていったそうです。最後の5分にどんでん返しのような種明かしがあります。
どんでん返しの伏線を探すのももちろん面白いのですが、堤監督らしい小ネタや遊びも多くあって、それらも見どころの1つでしょう。
劇中の会話で出てくる1987年のTBS系テレビドラマ『男女7人秋物語』に出演している片岡鶴太郎さんと手塚理美さんが、美弥子の両親役で出演しているのも一種の遊び心でしょう。
鈴木の同僚・梵(前野朋哉さん)が何気なく話す「やっぱり東京人は朝シャンが欠かせんのう。朝シャンも夜シャンも昼シャンも、わしゃ、シャンとするんじゃ」というセリフも、堤監督節が出ていて印象的でした。
また、意味があるのかどうかも不明ですが、小道具として“カニ”がやたらと出てきたのも堤監督節と言えるでしょう。ランチの最中に美弥子が鈴木にさらっと告白する場面で、美弥子が食べていたのもカニクリームコロッケ。なんとも徹底しています。
物語の舞台が1980年代後半なので、当時を知る人にとっては、その雰囲気や楽曲も楽しめることでしょう。車やファッションなど80年代カルチャーが多数登場します。カセットテープ、黒電話、ブーツ型ジョッキ、ソバージュの髪型、アラレちゃんメガネ、DCブランド、スクータータイプのオートバイ「JOG」、エアジョーダンシューズ、ハイレグ水着などが懐かしさを感じさせました。そして、森川由加里さんの「SHOW ME」、1986オメガトライブの「君は1000%」、太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」、オフコースの「YES・NO」、寺尾聰さんの「ルビーの指環」など、当時のヒットソングが物語を彩っています。
ネタバレになるため詳細な記述は避けますが、物語の冒頭から驚かされました。「亜蘭澄司」という謎のキャスト名が恐らくそれに当たるのでしょう。「亜蘭澄司」は、「アランスミシ」と読みとることができ、ハリウッド映画で使用される表現「アラン・スミシー」を連想させます。アラン・スミシーとは、映画監督が何らかの理由で降板したり、名前を明かしたくない場合に使用されるものです。本作では監督ではなくキャスト名に使われていて、ある意味重要な鍵となっています。
劇中で美弥子が鈴木に説明していましたが、“イニシエーション”とは子どもが大人になるための通過儀礼のことだそうです。初めて恋愛を経験した時には誰でも、この愛は絶対だと思い込みますが、この世の中には絶対なんてことは無いんだといつか分かる時が来ます。それが分かるようになって初めて大人になったと言え、それを分からせてくれる恋愛のことを“イニシエーション・ラブ”と表現しています。