シン・ゴジラ (GODZILLA Resurgence)

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映画『シン・ゴジラ』は、『エヴァンゲリオン』シリーズなどの庵野秀明さんが総監督・脚本を務め、『進撃の巨人』シリーズなどの樋口真嗣さんが監督・特技監督を務めています。『ゴジラ FINAL WARS』以来約12年ぶりの日本製作のゴジラシリーズとなります。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
東京湾羽田沖で漂流中のプレジャーボートが発見されるが、生存者は確認されず、残されたのはわずかな遺留品だけだった。
そんな中、東京湾アクアトンネルにて崩落事故が発生。これを受けて首相官邸で緊急会議が開かれ、事故の原因は海底火山の噴火か熱水の噴出によるものとの仮説が立てられる。内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己さん)は、その仮説に疑問を呈し、海底に未知の巨大生物が潜んでいるのではないかと指摘するが、一笑に付される。
ところがその直後、海上に巨大不明生物が姿を現す。日本政府は、駆除、捕獲、排除の検討を始める。有識者会議も開かれるが、想定外過ぎる事態でまるで意味をなさなかった。環境省自然環境局野生生物課課長補佐・尾頭ヒロミ(市川実日子さん)はその巨大生物が上陸する可能性があると指摘するが、閣僚たちはそれを一蹴。記者会見にて内閣総理大臣・大河内清次(大杉漣さん)が「上陸はあり得ない」と発表する中、巨大生物は大田区蒲田に上陸し、地面を這いながら市街地に突入する。
ここにきてようやく大河内総理が緊急事態の布告を宣言。巨大生物の駆除を作戦目的にして自衛隊が出動する運びとなる。自衛隊が攻撃準備を進める中、巨大生物は突然停止し、外見に変化が生じて立ち上がる。それはまるで進化の過程のようだった…。
本作は、現代の日本に突如現れた謎の巨大生物ゴジラの脅威と、その非常事態に奔走する官僚や政治家の人たちの人間ドラマが描かれていました。本多猪四郎監督の「ゴジラ」(1954年)と同じく、日本人と巨大生物のファースト・コンタクトの話で、これまでのゴジラの“続編”ではなく、いうなれば新しいゴジラの始まりとでもいいましょうか、タイトルにはその意味合いも含まれているように感じました。
印象的だったのは、ゴジラ vs 自衛隊、ゴジラ vs アメリカ軍、最終的には日米共同で決行されたヤシオリ作戦です。自衛隊等の動きや攻撃の仕方がリアルで、実際に巨大生物が現れて総力をあげて対処することになったらこうなるのではないかと感じさせ、真に迫っていました。国内シリーズとしては初となるフルCGゴジラも随所にこだわりが感じられ、異様な雰囲気と迫力がありました。ちなみに動きにはモーションキャプチャが用いられ、狂言師の野村萬斎さんが演じています。
関係省庁との調整、法整備の緊急性、自衛隊の活動に関する制限などで問題が感じられたり、前例主義、問題先送り、責任回避を図る有識者たちや、根拠なく楽観視する官僚や政治家の人たちがいたりして、東日本大震災の時の出来事を彷彿とさせました。
各省庁のはみ出し者が集められて編成された対策チーム「巨大不明生物災害対策本部」のおかげで最悪の事態を回避することに成功するという展開もよかったです。
親からの才能と七光りでのし上がったという共通点を持つ、いわば“政治家向き”の矢口蘭堂と米国大統領特使のカヨコ・アン・パタースン(石原さとみさん)、現実主義者で常に冷静で人よりも先のことを考えている“官僚体質”の内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹(竹野内豊さん)などもいい味を出していました。
観る人の視点や経験、考え方によって感想が大きく変わる作品だと思いました。