LOGAN/ローガン (ヒュー・ジャックマン)

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映画『LOGAN/ローガン』は、 『X-メン』シリーズの登場人物ウルヴァリンを主人公にした作品の第3弾です。
ウルヴァリン:SAMURAI』に続いてジェームズ・マンゴールド監督がメガホンを取っています。
ヒュー・ジャックマンは、ウルヴァリンことローガン役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
2029年。すでにミュータントの大半が死滅し、ここ最近新たなミュータントも生まれておらず絶滅の危機に瀕していた。
かつて“ウルヴァリン”の名で知られていたローガンことジェームズ・ハウレット(ヒュー・ジャックマン)は、全身の骨格に施されたアダマンチウムが中毒症状を引き起こしていて、その影響で治癒能力が弱まって老化も進行していた。今は雇われのリムジン運転手として日銭を稼ぎ、メキシコ国境近くにある廃工場でチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)とキャリバン(スティーヴン・マーチャント)と一緒にひっそりと暮らしていた。チャールズは認知症の影響からか度々記憶をなくし、発作によってスーパーパワーを暴走させてしまうことがあり、それを抑えるために薬を服用している。そんなチャールズをローガンとキャリバンが介護しているのだ。
ある日、チャールズが「新しいミュータントが政府に追われている」と言い出すが、ローガンは信用せず相手にしなかった。そんな中、ローガンの前に元看護師ガブリエラ・ロペス(エリザベス・ロドリゲス)が現れる。彼女は連れていた少女ローラ(ダフネ・キーン)を、カナダに国境を接するノースダコタまで送り届けるよう依頼。拒否するローガンだったが、成り行きでローラを保護することになり、ローラを執拗に追うドナルド・ピアース(ボイド・ホルブルック)率いる武装集団の襲撃を受ける。そんな中、ローガンは、ローラの超人能力を目の当たりにする。ローラはローガンと似た能力を持つミュータントだったのだ。
ローガンは、チャールズとローラを車に乗せて、なんとかピアース一味の包囲網を突破して荒野を突き進むのだった…。
これまでのシリーズとは異なるアプローチで描かれていて驚きました。アクションというよりは、キャラクターの表現に主眼を置いた感じで、スーパーヒーローの要素より人間性が描かれていて、深みのある大人向けの内容になっていました。とはいえ、もちろんアクションシーンも凄かったです。今回は従来の派手さはなかったものの、生々しかったです。
チャールズ、ローガン、ローラの関係性が印象的でした。まるで祖父、父、娘が織り成すロードムービーのようでした。
あらゆるものに敵意をむき出しにするローラが少しずつ変わっていき、やがて仲間たちと共に物事をなす姿は、まさにローガンの過去と重なりました。また、多くの者を傷つけた贖罪と仲間を救えなかった無念を抱えるローガンは、ローラを守ることで何かを学び、今までにない感情に突き動かされ、未来に向けて自分が為すべきことを見つけていきます。様々な感情に揺さぶられながら、もはや治癒能力もなく傷だらけになって苦しんでもなお戦い続けるローガンの姿に胸が熱くなりました。そして、ローガンがある意味過去の自分とも言えるX-24(ヒュー・ジャックマン:二役)と対峙するのも興味深かったです。その戦いの果てにローガンが「そうか、こんな気分なのか…」と呟く場面が心に残りました。
ローガンとチャールズの関係性も興味深かったです。これまでは基本的にはチャールズの方がローガンの暴走を気にかけ寄り添う側でしたが、本作ではまるで反対で、ローガンの方がチャールズの発作による暴走を気にかけ寄り添っていました。でもチャールズはやはりローガンのことをきちんと気にかけていました。チャールズはローラに「ローガンは死にかけてる。死にたがってる。ローガンを死なせるな」と密かにアドバイスしていたのです。
シリーズファンとして衝撃的だったのは、ローガンたちがどうして身を隠して生活しなければならなかったのか、ローガンがチャールズから何を隠そうとしていたのかが判明した時です。それと同時にローガンの優しさが伝わって身に染みました。本人は忘れてしまっていましたが、どうやらチャールズは、過去にニューヨークのウェストチェスターにおいて、発作のせいで悲劇を起こしてしまったようです。ウェストチェスターはプロフェッサーXことチャールズがミュータントのための学校を設立した場所です。すなわち発作時のスーパーパワーの暴走のせいで、自分の仲間や生徒を殺してしまったということでしょう。なんとも悲しいエピソードでした。
チャールズとローラは、ホテルの部屋のテレビでアメリカ映画『シェーン』(1953年公開作品)を食い入るように観ていました。その映画の中で出たセリフをローラがある場面で話すところが印象的でした。それは「人の生き方は決まっている。変えることはできない。一度人を殺した者は元には戻れない。それが正義だとしても人殺しの烙印を押される…」といったセリフでした。ローガンはローラに「(人を傷つけたということは)背負って生きていくしかない」と諭すように言っていました。
ローラが墓標の十字架を斜めにして“X”の形にする場面も印象的でした。
本作は、ローガン役のヒュー・ジャックマン、チャールズ役のパトリック・スチュワートがそれぞれ同役を演じる最後の作品となるそうです。シリーズファンとしては寂しい限りです。