響-HIBIKI- (平手友梨奈さん)

hirateyurina

映画『響-HIBIKI-』は、柳本光晴さんによる漫画『響 ~小説家になる方法~』を実写映画化した作品です。『君の膵臓をたべたい』などの月川翔監督がメガホンを取っています。
欅坂46の平手友梨奈さんは鮎喰響 役で出演しています。
一昨日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
出版不況の中、文学界は特に苦戦を強いられ、現状の厳しさを嘆く編集者もいる。そんな中、文芸誌「木蓮」編集部の新人賞宛に、“鮎喰響”という作者の名前しかなく連絡先が書かれていない原稿が届く。新人賞応募作のようだが、応募要項にネットのみの受付としてあったため破棄扱いとなる。しかし、たまたま編集者の花井ふみ(北川景子さん)が目をとめて拾い上げる。
鮎喰響(平手友梨奈さん)は、高校に入学したばかりの15歳の少女だった。文芸部に入部しようと、幼馴染で同級生の椿涼太郎(板垣瑞生さん)と一緒に部室へ行くが、不良たちの溜まり場と化していて、新入部員は募集していないと断られる。それでも引かない響に対し、塩崎隆也(笠松将さん)が「殺す」と脅したところ、響に指を折られる。響は殺されないように指を折ったのだと平然と言い放つ。
翌日、響と涼太郎が再び部室に行ったところ、2年生の文芸部部長・祖父江凛夏(アヤカ・ウィルソン)と会う。凛夏は2人を部員として迎え入れてくれるが、響の指折り騒動の件で部員が辞めてしまい、4人いないと部活として認めてもらえないため、新入部員を集めてほしいと響に頼む。響は事もあろうに指を折った相手である塩崎を勧誘。塩崎はここぞとばかりに復讐しようと響を脅かすも、逆に響の度胸に圧倒されて屈し、文芸部に再入部する。
一方、編集者の花井は、響の新人賞応募作「お伽の庭」を読んで衝撃を受け、どうにかこれを世に出したいと考えるが、連絡先が分からず途方に暮れていた。そんな折、後からネット受付のみという応募要項を知った響が、学校の公衆電話から編集部に連絡する。ちょうど花井が電話に出て響と話をするが、作品が面白かったことを伝えたものの連絡先を聞けずじまいで電話を切られてしまう。
そんな矢先、花井は、世界的人気作家・祖父江秋人(吉田栄作さん)のコラム原稿を受け取りに行くことになる。花井は祖父江の娘・凛夏の作品をチェックする間柄で、編集長・神田正則(高嶋政伸さん)から、“祖父江凛夏”名義で小説を書いてもらうよう凛夏に頼んでこいとも言われていた。神田いわく「祖父江2世は金になる」とのことだ。凛夏のもとにはちょうど響が遊びに来ていて、花井は響と運命的な出会いを果たすのだった…。
響は、圧倒的かつ絶対的な文才を持ち、自分の信じる考え方を絶対曲げない性格です。世間の常識に囚われて建前をかざして生きる人々の誤魔化しを許すことができず、衝突することもしばしば。本作はそんな響の生き様と、彼女によって影響されていく人たちの物語が描かれていました。
特に印象的だったのは、響の向き合い方です。響はあくまでも相手と“1対1”で向き合います。響は、新人作家・田中康平(柳楽優弥さん)から挑発的な態度を取られたことに腹を立てて暴力を振るいました。後ほどそのことがマスコミに取りざたされ、花井が世間に謝罪の気持ちを示すべきだと要求した時、響は「殴った本人には謝罪したのよ。なんで世の中に謝罪しなくちゃいけないの」と反発しました。またある記者会見で週刊誌記者・矢野浩明(野間口徹さん)から、世の中で暴力行為が問題になっているとしてそのことに対する感想を求められた際には、世の中がどうとか人がどう言ってたかではなくて、あなた自身の意見はどうなのかと、あくまでも本人の意見を聞こうとしました。間接的な関わり合いではなく、目の前の人との関わり合いを重視し、疑問に思ったことや不満があれば直接本人にぶつけていくという響の生き様を見て、決して暴力行為そのものは許されることではありませんが、はっとさせられましたし、ある意味痛快に感じました。
響は、小説を読むのも書くのも好きで、心に直接触れてるみたいだと言います。それゆえか小説の批評も容赦ありません。相手が友達の凛夏であっても、過去に芥川賞を受賞した鬼島仁(北村有起哉さん)であっても、作品がつまらなければ正面からそのことを伝えます。面白ければ純粋に好意を示し、普通のファンの人のように握手さえ求めます。駄作しか書けないから死ぬと言う小説家・山本春平(小栗旬さん)に対しては、「人が面白いと思った小説に作者の分際で何ケチつけてんの」「太宰治も言ってるでしょ。小説家なら傑作一本書いて死になさい」など、叱咤激励ともとれる言葉を言い放ちました。それから響は「私は死なないわよ。まだ傑作を書いた覚えはない」と宣言しました。響の自分に嘘をつかない、軸がぶれないところが凄いと思いました。響がゴスロリの衣装を着たり、動物園等で文芸部のみんなとはしゃいだりするのも、普段の姿とギャップがあって可愛らしかったです。
天才とはどういう存在か、作者の人格と作品は切り離して考えるべきか、面白い作品とは何かについても考えさせられました。