君の膵臓をたべたい (浜辺美波さん)

hamabeminami

映画『君の膵臓をたべたい』は、住野よる氏の同名小説を実写映画化した作品です。
浜辺美波さんは、山内桜良 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
母校の高校に勤める国語教師・志賀春樹(小栗旬さん)は、高校時代に図書館の膨大な本を分類・整理したことがあった。そのため、取り壊しが決まった図書館の蔵書整理を頼まれる。春樹にとってその図書館は当時のクラスメイト・山内桜良(浜辺美波さん)との思い出が詰まった場所だ。蔵書整理の手伝いに来ていた生徒と話すうちに、春樹は高校時代を回想し始める。
12年前、盲腸の手術をした春樹(北村匠海さん)は、病院で桜良の“共病文庫”なる日記帳を拾う。それはいわゆる闘病日記で、膵臓の病気により余命がもう長くはないことが記されていた。春樹は思わずそれを読んでしまい、身内以外で唯一桜良の病気を知る人物となってしまった。しかし桜良は、そんな秘密を知られても何事もなかったかのように春樹に笑顔を見せる。
その後、桜良は、春樹と同じ図書委員に立候補。春樹がおこなっていた本の分類・整理の手伝いを始める。それから春樹に、自身の“死ぬまでにしたいこと”の手助けをするよう言うのだった…。
本作では、原作小説には無い12年後の“現在”が描かれ、“過去”と“現在”の2つの時間軸が交錯しながら物語が進んでいきます。そのことにより物語に奥行きが出て世界観が広がっているように感じられてよかったです。
他人と関わることを避け、いつも本を読んでいる春樹。彼はクラスでは地味な存在でした。一方、桜良は明るくてクラスでは目立つ存在で人気者でした。そんな彼女は、持ち前のポジティブさと行動力で、春樹を巻き込みながら自身の“死ぬまでにしたいこと”を実践していきます。春樹が自分にはない価値観を桜良から教わっていくところが興味深かったです。余命わずかな桜良の一日は自分の一日より尊いと思っている春樹に対して、桜良は誰でもいつ何があるか分からないとし「私も君も、一日の価値は一緒だよ」と言いました。一日一日が、かけがえのないものなのだと改めて感じました。
桜良の「誰かと一緒にいて、手を繋ぐ、ハグをする、すれ違う。それが、生きる。自分一人じゃ生きてるって分からない。そう…好きなのに嫌い。楽しいのに鬱陶しい。そういうまどろっこしさが、人との関わりが、私が生きてるって証明だと思う」という言葉も印象的でした。
また、春樹は2人が出会ったのは共病文庫を拾った“偶然”からだとし、自分はただ流されているだけだと考えますが、桜良はそれを否定します。桜良の「君がしてきた選択と、私がしてきた選択が私たちを会わせたの。私たちは、自分の意思で出会ったんだよ」という言葉も印象的でした。すべての出来事は選択の積み重ねであり、自らの選択によって人生をつくっていくのだと改めて感じました。
クラスメイトのいわゆる“ガム君”もいい味を出していましたし、桜良の親友・恭子(高校時代:大友花恋さん/現在:北川景子さん)と桜良と春樹の関係性も興味深かったです。
桜良が「真実か挑戦か」というゲームの力を借りて春樹に聞きたかったことは、終盤で重要なポイントとなってきます。『星の王子さま』が効果的に使われているのもよかったですし、春樹だけが読むことを許された共病文庫が、いわば桜良から春樹へのラブレターになっていくのも感動的でした。
タイトルにもなっている“君の膵臓をたべたい”という言葉は、春樹も桜良も使っていました。物語の冒頭で、桜良が春樹に「昔の人はどこか悪いところがあると、他の動物のその部分を食べることにより病気が治ると信じられていた」という話を紹介します。でも2人が終盤で使う“君の膵臓をたべたい”という言葉に込められた思いは、もっと深いものでした。2人はお互いに尊敬していて、どちらも“君になりたい”と思っていたのです。恋愛とも友情ともつかない、純粋でせつない想いが感じられて心に響きました。