- 2021年7月28日
アニメーション映画『サマーウォーズ』は、『時をかける少女』を手がけて一躍注目を浴びた細田守監督の最新作です。
キャラクターデザイン・貞本義行さん、脚本・奥寺佐渡子さんなど、『時をかける少女』のスタッフが再結集しました。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
とある夏休み。高校2年生の小磯健二は、友人の佐久間敬とともにインターネット上の仮想世界・OZ(オズ)のシステム保守点検のバイトをして過ごしていた。このOZの中に世界中の人々はアバターと呼ばれる自分の分身を持ち、電子メールやショッピングなど現実の生活さながらの様々な活動を行なっている。もはやOZは生活になくてはならないものとなっていた。
そんな中、健二は、憧れの先輩・篠原夏希から田舎に一緒に行くだけという謎のアルバイトを頼まれる。喜んで応じた健二だったが、そこで待っていたのは、数百年以上の歴史を持つ戦国武将の末えい・陣内家であり、夏希の曾祖母で陣内家16代目当主である栄や親戚たちの前で夏希のフィアンセのふりをするというアルバイトだったのだ。幸い、健二は栄に認められ、総勢27人の陣内一家から歓迎を受ける。にぎやかながら平穏にフィアンセの芝居は終わるかに見えたが、ある夜、健二のもとに届いたメールに書かれた数字の暗号を、数学の得意な健二は興味本位に解いて返信してしまい、それが健二の運命を大きく変えてしまうことになる。実は数字の暗号の答えは、仮想世界・OZのセキュリティコードだったのだ。それによって何者かがOZを占領し、社会を制御するシステムを利用して現実の社会まで大混乱に陥れる。しかも健二のアバターになりすましたため、健二は犯人と誤解されることになってしまった。新しいアバターを使い、無実を証明しようとする健二だが、誤解を解くことができず、逮捕されてしまう。
健二の無実を信じ、敵と戦うために立ち上がった栄。栄の号令で陣内一家も動き出した。みんなの努力が実を結び、OZの大混乱は一旦収まったかのように見えたが、謎のアバター・ラブマシーンがさらにパワーアップして暴走し始める。ラブマシーンを止めるため、再び健二と陣内一家は力を合わせて闘うことにするのだった…。
舞台となっているのは長野県上田市で、ジブリ作品などで知られる美術監督・武重洋二さんの手により、美しい城下町の町並みや田園風景、電車などが緻密に描かれています。そして、何と言っても印象的なのが日本の夏の風景。入道雲や縁側に並んだ朝顔の鉢植え、蚊帳など、懐かしさが漂っていました。それとは対照的に登場するのがインターネット上の仮想世界・OZ。ゲームのような世界が繰り広げられるOZは、柔軟で多彩な変化を見せ面白かったです。
物語のテーマは“家族の絆”でした。陣内一家には各々役割のようなものがあり、それぞれ自分の得意分野で貢献し活躍しました。そのことで若干、主人公・健二の存在感が薄まった気がしないでもないですが、きちんと最後に見せ場があり、引っ込み思案で内気な性格の健二が、最後まで諦めない姿は素敵でした。曾祖母・栄ばあちゃんを求心力に健二と陣内一家が一丸となって闘い、その姿にやがて世界の人々が共鳴していく展開は、ベタながら感動的でした。家族に限らず、人と人との繋がりの大切さも感じさせてくれる一幕といえるでしょう。
物語を通して、やはり栄ばあちゃんの存在感が光っていました。ネタバレとなるので多くは語りませんが、栄ばあちゃんの夫の隠し子だった侘助は、元々は栄ばあちゃんとの絆を求め、自分を認めてもらいたくて、事件の原因ともいえることをしでかしてしまいました。回想シーンとして登場する、若き日の栄ばあちゃんが侘助の手を引いて野道を歩く後ろ姿が印象的でした。
陣内家にとって1番よくないことは、「お腹が空いていることと、ひとりでいること」。世界が危機に瀕している時に、大家族がみんなで食事をする場面も妙に印象的でした。