泣くな、はらちゃん 最終回

nagasetomoya04 asokumiko02
kutsunashiori03 yakushimaruhiroko
日本テレビ系列にて毎週土曜夜9時から放送されていた連続ドラマ『泣くな、はらちゃん』は先週、最終回(第10話)を迎えました。
●あらすじと感想
自分はちっぽけなどうでもいい人間だから、自分なんかいなくなったって現実世界は何も変わらないと話す越前さん(麻生久美子さん)に、はらちゃん(長瀬智也さん)はそんなことを言う越前さんは好きではない。帰って自分自身と世界と両思いになるべきだと言います。折りしも現実世界では越前さんの弟・ひろし(菅田将暉さん)がノートを紐で自転車にくくりつけて、越前さんを現実世界に戻そうと引きずって衝撃を与えていました。はらちゃんは越前さんを抱き寄せて、現実世界に連れ出すことに成功しました。矢口百合子(薬師丸ひろ子さん)も越前さんを喜んで迎え入れます。
はらちゃんは越前さんに新婚生活を体験してみたいと要望します。それは一時的なもので、はらちゃんは漫画の世界に帰るつもりであるということを越前さんも感じているようです。はらちゃんは祭りで神輿を担ぎ、越前さんの隣で横になり、雪の儚さと美しさを知り、越前さんとお互いに両思いを感じながら、現実世界とその住人である田中くん(丸山隆平さん)、紺野清美(忽那汐里さん)、百合子たちと別れる準備をしていきます。越前さんも職場で自分の主張ができるようになるなど、変化の兆しがありました。はらちゃんはその様子を嬉しそうに見届けました。
そして、はらちゃんは、越前さんに世界と両思いになるように諭し、またどうしても辛くなったら自分がいつでもやって来ると伝えて、2人はまるで結婚式のケーキ入刀のように一緒にノートを開きます。すると、漫画の中の越前さんの姿は消え、はらちゃんは漫画の世界へと帰っていきました。
その後、越前さんは正式に工場長になり、忙しく過ごしています。弟のひろしは『はたらけ!ひろし』というタイトルの漫画を描き始めました。田中くんは副工場長となり、越前さんをサポートしています。百合子は“矢東薫子”として新連載をスタートさせました。清美は人前で歌えるようになり、顔を見せて堂々と十数人の観客を前にギターの弾き語りをし、その際に田中くんから片思いの相手を聞かれて、キレ気味に告白。田中くんは気づいていなかったことに対して謝罪しました。
越前さんは相変わらず漫画に愚痴を描きますが、その内容は以前よりも前向きで明るく、背景や小道具なども豪華になっています。越前さんは、自分の少しの変化を感じ、世界と両思いとまではいかなけど片思いだとし、はらちゃんに会いたい気持ちを抑えていました。そんなある雨の日、転んでしまった越前さんはノートを落とし、傘を差し出すはらちゃんと再会。お互いに見つめ合って笑顔を浮かべるのでした…。
越前さんが他の人を好きになってしまっても、それで越前さんが幸せならば自分も幸せだと言うはらちゃんに、百合子がそれをこの世界では“愛”と呼び、その気持ちを誰かに持てることは幸せなんだと説明する場面が印象的でした。それは、はらちゃんが以前「片思いは美しい」と言っていたことにも繋がり、ラストで越前さんが「世界に片思いです」と清々しく言い切るところにも繋がっているように感じます。
百合子の「人はさ 、自分の世界を疑わなくなっちゃうんだよ。自分のいる世界だけが世界だと思ってしまう。だから、世界の常識と違うことを言ったりしたりする人を、変な人だと決めつけてしまうんだ。おかしいよね、そんなの。だって今いるこの世界だって、誰かが描いている漫画の中かもしれないでしょ」というセリフも印象的でした。それは自分の価値観、物差しだけで判断することへの批判でもあり、このドラマで描かれた現実世界とされる世界でさえ、誰かが描いている漫画の中だということを示唆しているように聞こえました。このドラマの登場人物は、矢口百合子と紺野清美以外はフルネームが提示されていません。ドラマで現実世界とされる世界は、実はこの2人の合作の漫画だったというオチなのではと想像するのも楽しいです。百合子の次のセリフが頭の中で駆け巡ります。「わかんないよ~。漫画って、凄いんだから」

page top