- 2013年10月9日
北村有起哉さんは、TBS系列の毎週月曜夜8時「月曜ミステリーシアター」枠にて放送されていた連続ドラマ『刑事のまなざし』に長峰亘 役で出演しました。
一昨日は最終回(第11話)が放送されました。
●あらすじと感想
池袋で次々と起こる連続殺人事件。容疑者として浮上したのは、夏目信人(椎名桔平さん)がかつて法務技官として関わった、父親が殺された山之内信吾(窪田正孝さん)だった。さらに3件目の被害者の手に万華鏡が握らされていたことで衝撃が走る。なんとその万華鏡は、10年前に夏目の娘が通り魔に襲われた事件の現場からなくなっていたものだった
今回の事件が10年前の事件と繋がったことで、被害者家族である夏目は捜査本部から外れるよう指示される。しかし、菊池大雅(要潤さん)と長峰亘(北村有起哉)が管理官・藪沢(升毅さん)に進言したことで、夏目は捜査本部にとどまれることになった。
夏目、安達涼子(小野ゆり子さん)、福森誠一(松重豊さん)が、山之内の居所をつかむべく捜査に走り回る中、山之内が殺傷能力のある改造モデルガンを持っていることが判明する。そして、そんな中、夏目の携帯に連絡が入る。着信表示は妻・美奈代(吉田羊さん)の携帯番号であったが、夏目が電話に出たところ、相手は山之内だった。山之内は、電話のことは他の刑事に内緒で、もし話したら夏目の娘・絵美(山田杏奈さん)を殺すと告げるのだった…。
10年前に絵美が被害者となった連続通り魔事件の担当でもあった長峰は、今でも夏目が心の底では娘の復讐を望んでいるのではないかと疑って、夏目のことが理解できずにいました。そんな長峰に、菊池は「分からないのは見ようとしないからです。先輩はいつも夏目さんの中に自分の過去を見ている。犯人を挙げられなかった自分の過去ばかりを見て、今の夏目さんを見ようとしない」と指摘しました。
絵美の病室に侵入して銃で脅す山之内は、幸せな人間は自分のような不幸な人間の存在のことは見ようとしないと主張します。それに対して病室に駆けつけた夏目は、山之内が最初に殺した大学生は2年前の震災に遭って不幸に見舞われながらも亡くなった人たちの分まで生きるんだと力いっぱい大学生活を過ごしていたこと、山之内が2番目に殺した女性は長い不妊治療の末に授かった子どもを流産で亡くしたばかりだったことを話します。それから「刑事になって、僕が出会った様々な人たち、彼らもまたそれぞれの苦しみを抱え、傷を抱え、必死で生きていた。時に過ちを犯しながら、痛みとともに生きていた。街を歩く人がみんな幸せに見えたのなら、君もまた目を閉じていたんだ」と言いました。すると山之内は、説教のお礼だとして夏目に銃を渡し、復讐をする絶好の機会だとして、自分を撃つように勧めました。しかし、夏目は銃を持つものの撃たずに「君はとてつもない重い罪を犯したんだ。君のしたことは、一生かけても決して償いきれるものじゃない。だけどね。僕は君の未来を信じるよ」と涙ながらに言いました。その際、植物状態のはずの娘・絵美の「頑張れ」という声援もありました。捜査をする過程で山之内の計画に気づいた福永たちが病院に駆けつけ、夏目の目の前で山之内は逮捕されました。
「疑うのが俺の仕事だ」と言っていた長峰は、10年前の事件当日、山之内が三鷹の踏切で自殺を図って一日中警察で事情を聴かれていたことを突き止めました。絵美を襲ったのは山之内ではなかったのです。万華鏡は2年ほど前に工場の寮で盗んだバッグの中に入っていたと山之内は白状しました。
そして夏目は、山之内と境遇が似た無期懲役囚・宗方善(平幹二朗さん)から「被害者を被害者としてしか見ようとしないなら、加害者を加害者としてしか見ようとしないなら、君は目を閉じているも一緒だ。そしてこの世界は変わらない、いつまでも」と言われて、あることに気づきました。それは、今回の連続殺人事件の3件目とされる横山ちはる(松田沙紀さん)の死は、山之内の犯行ではなく、自殺によるものだったということです。自分の子どもがかわいいと思えないちはるは、孤独の極みで自殺まで追い詰められたのです。山之内が遺体に万華鏡を握らせたのは、警察に自殺の疑いを持たせないためでした。ちはるの息子に自分と同じ苦しみを与えたくないと考えた山之内は、ちはるの自殺を隠すために自分が殺したように偽装したのです。山之内は、母親が死を選んだのは自分が原因だったのではないかと考え、生きていることそのものが罪のように感じていました。罪を償うために、親が自分を捨てたように自分で自分を捨てる自殺を選んだ山之内ですが、自殺したいという思いは心の鏡に反射されて、それが外に向けられた時に他者への殺意と変わったようです。夏目は、法務技官の頃には見えなかった山之内の心をようやく見ることができたのです。
山之内の父親を殺してしまって服役を終えた尾崎秋彦(柏原収史さん)は、妻・悦子(須藤理彩さん)の親友でもあるちはるの息子を引き取ることにしました。山之内と似た境遇の子を育てることが、尾崎の見いだした“償い”の形なのです。
長峰は、病院のベッドの上で眠り続ける絵美のお見舞いに来て、「君を襲った犯人は必ず捕まえる。だからもうちょっと待っててほしい。絵美ちゃん、僕を刑事にしてくれたのは君だった」と話しかけて、京都へ向かいました。10年前の犯人の手がかりを掴んだようです。
絵美は病室で眠り続けたままですが、元気な頃に目を覚ます前に見せていたのと同じ仕草をしました。夏目夫妻は、絵美が目を覚ますのはきっともうすぐだと喜び、絵美にエールを送ります。それから夏目はいつものように東池袋署に向かうのでした…。
どんなに傷めつけられても、人の未来を信じようとする夏目のまなざしが印象的でした。
夏目の言うように、大切な人を守るためにできることは、現実から逃げないことしかないのかもしれません。そこに厳しい現実が待ち受けていようとも、希望の未来はきっとある、そう信じ続けたいものです。