なくもんか (阿部サダヲさん)

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映画『舞妓Haaaan!!!』の水田伸生監督、脚本の宮藤官九郎さん、そして主演の阿部サダヲさんが再結集して作り上げた映画『なくもんか』に、阿部サダヲさんは、祐太 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
祐太(阿部サダヲさん)と祐介(瑛太さん)は、祐太がまだ幼く、祐介がまだ母・祐子(鈴木砂羽さん)のお腹の中にいる頃に、無茶苦茶な人生を送る父・健太(伊原剛志さん)のせいで、生き別れた兄弟。
父に引き取られてすぐに捨てられた祐太は、父の友人で、東京下町・善人通り商店街の「デリカの山ちゃん」初代店主・山岸正徳(カンニング竹山さん)とその妻・安江(いしだあゆみさん)に、実の息子のように育てられた。その恩返しとばかりに、いつも笑顔でバカが付くほどに働く祐太は、正徳亡き後もハムカツを名物に「山ちゃん」を行列のできる超人気店へと成長させ、商店街の顔になっていた。
一方、幼い頃に母を亡くし親戚をたらい回しにされた祐介は、他人を笑わせることで居場所を見つけていき、赤の他人である金城大介(塚本高史さん)と兄弟漫才師「金城ブラザーズ」としてデビューすることにより、超売れっ子お笑い芸人になっていた。大介の書いた、全くのウソの「金城ブラザーズ」の貧乏な幼少時代の自伝小説「コプ太と赤い車」が大ベストセラーになったのもあり、本当の兄弟でないことは世間にひた隠しにしている。
そんな中、10数年ぶりに、山岸夫婦の一人娘で、祐太と子どもの頃から実の兄妹のように仲良く暮らしていた徹子(竹内結子さん)が突然帰ってきた。しかも、デブで不細工だった徹子が、まるで別人のような超美人になっていた。子連れでいろいろとワケありの徹子を、祐太は問い詰めることなく笑顔で迎え入れ、どさくさに紛れてプロポーズ。めでたく結婚が決まり、婚姻届を出すために戸籍謄本を入手した祐太は、「金城ブラザーズ」の祐介が実の弟であることを知るのだった…。
この映画は基本コメディですが、人情劇にも比重を置いているので、笑いを期待して観ると物足りなさを感じるかもしれません。でも、先入観を持たずに、ホームドラマを観る感覚で気軽に観ると、クスッと笑える楽しさやジワッとくる切なさが感じられて面白いと思います。
テーマは“家族”です。いろいろと詰め込みすぎて、その焦点がぼけているような気もしましたが、裏を返せば話がてんこ盛りということなので、それぞれ想像して補いながら楽しむというのもよいかもしれません。
究極の八方美人で、笑顔が顔に貼りついているとも言える気の毒な主人公の祐太。お笑い芸人でありながら、うすら寒い雰囲気を身にまとい、しかも空気を読めない祐介。攻撃的で、言いたい放題のはっきりした性格の徹子。そして、認知症ぎみながらもボケとツッコミが冴えている安江など、キャラクターも個性的で面白かったです。
印象的だったのは、家族ですき焼きを食べるシーンにおいて、祐太が発した「それぞれ腹に何かを抱えていても、黙って一緒に飯を食うのが家族」という言葉。それから、ネタバレになるので詳細は避けますが、ラストの漫才シーンにおいて、ステージを終えた祐介と祐太が舞台からはける時のスローモーションのところです。主題歌である、いきものがかりの「なくもんか」も映画の内容に合っていてとても良かったです。