アバター (サム・ワーシントン)

samworthington

サム・ワーシントンは、ジェームズ・キャメロン監督の最新作、映画『アバター』(AVATAR)にジェイク・サリー 役で出演しています。
先日、3D版で鑑賞しました。
●導入部のあらすじと感想
人類が宇宙へ進出した22世紀。人間は地球から遠く離れた星・パンドラにあるとても貴重な鉱物に目をつけて、アバター・プロジェクトによって採掘をもくろむ。パンドラの大気は地球と異なり、人間は活動することができない。そこで計画されたのが、アバターの体に人間の意識を送り込み、パンドラへ潜入するアバター・プロジェクトである。アバターはパンドラの先住民ナヴィと人間のDNAで作られた肉体だが、そのうちの1体にジェイク・サリー(サム・ワーシントン)の双子の兄のDNAが用いられていて、その兄が死んでしまったため、遺伝子の同じジェイクが引き継いで参加することになった。ジェイクは戦争で負傷して下半身不随になった元海兵隊員である。車イス生活を送るジェイクは、アバターに意識を移して再び動けるようになり興奮する。
そんな中、ジェイクはナヴィの世界への潜入に成功し、その生態や習慣、文化などに触れて彼らに共感を覚えていく。やがてジェイクは、鉱物の採掘活動を推し進める地球の軍隊とナヴィの間で葛藤していくのだった…。
幻想的で美しい世界が3Dによって見事に表現されていました。3Dは、人や物が派手に画面から飛び出すといった感じではなく、画面の奥行きや繊細さを強調する演出でした。2時間30分を超える作品なので、目の疲れを考えるとちょうど良かったのかもしれませんし、世界に浸るのにも適していたように感じます。
ストーリーや登場人物の性格は単純といえば単純でいろいろと突っ込みどころがありましたが、前述の映像美に加え、世界観やテーマがしっかりしていたので、最後まで楽しめました。世界観は宮崎駿作品を彷彿とさせるものではありましたが、私はさほど気になりませんでした。それよりもそのような世界が実写と見まがうばかりのリアルな映像で表現されていて、そのきめ細やかなビジュアルに圧倒されました。
物語では、まるで男の子のように精神的に幼かったジェイクが、ナヴィと出会って多くの試練を乗り越えることにより、一人前の男へと成長していきます。虐げられている人々を守ったり、大切なもののために立ち上がったりして、責任とは何かといったことを学んでいくのです。解決の手段が結局戦争のようになってしまったのは残念でしたが、戦闘シーンも迫力があって見応えがありました。
興味深かったのは、パンドラの動植物が独自の生態系のもとでつながり、通じ合わせていることです。ナヴィは、長い髪の先のような体の触手によって馬や空飛ぶ恐竜のような野生動物と“絆”を結び、背中に乗って操ります。それも単純に触手をつなげばよいというものではなく、絆を結ぶことができなければ、意志の疎通もできないのです。目に見える物質世界だけしか感じることができずにいたジェイクは、最初てこずりますが、やがてナヴィと同じように心・魂の世界を感じることができるようになって、絆を結ぶことに成功しました。ナヴィの族長の娘であるネイティリ(ゾーイ・サルダナ)とジェイクの間で交わされる「あなたが見える」という言葉が印象的でした。それは心の絆が結ばれたことを意味していて、相手の本当の姿、心・魂の姿が見えるということなのでしょう。人間はナヴィのことを「野蛮」と言っていましたが、むしろ相手のことを理解しようともせず一方的に攻撃をする人間の方が野蛮で、純粋に生命を慈しみ、あらゆる動植物との共存共生、調和を図るナヴィが高度な存在に見えました。
斜に構えずに観れば、普通に楽しめる作品だと思います。