のぼうの城 (野村萬斎さん)

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映画『のぼうの城』は、『ゼロの焦点』の犬童一心監督と『日本沈没』の樋口真嗣監督が異色のダブル監督に挑み、第29回城戸賞を受賞した和田竜さんのオリジナル脚本を映像化した作品です。
野村萬斎さんは主人公である“のぼう様”こと成田長親 役で出演しています。
一昨日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
天下統一を目前に控えた豊臣秀吉(市村正親さん)は、残る敵対勢力である北条勢を攻撃目標に定める。人々が平穏に暮らす忍城もその1つだった。秀吉は圧倒的な力を世間に見せつけるべく、兵力わずか500の忍城に対して2万の軍勢で落とすよう、寵愛の家臣・石田三成(上地雄輔さん)に命じる。
一方、忍城城下では、成田長親(野村萬斎さん)が農民や子どもたちと楽しそうに戯れていた。長親は城主の従兄弟でありながら、武将らしい才能はなく、しかし不思議と人気だけはあって、領民からは“でくのぼう”を意味する“のぼう様”の愛称で呼ばれて慕われていた。
城主・成田氏長(西村雅彦さん)は、裏で秀吉側への降伏の手はずを整え、重臣たちに「秀吉軍とは一戦も交えずに速やかに開城せよ」との言葉を残し、表面上は北条氏に従うように見せかけるために小田原に向かった。そんな中、三成率いる凄まじい数の天下軍が忍城を包囲する。
多勢に無勢、このまま降伏して開城すると踏んでいた天下軍は、降伏の条件として北条勢討伐に兵を、そして秀吉に城主の娘・甲斐姫(榮倉奈々さん)を差し出すよう高圧的な態度で要求する。
しかし、城主代理役になった長親は意外にも「戦いまする」と発言。正木丹波守利英(佐藤浩市さん)をはじめとする重臣たちは初めは長親を説得しようとするが、ついには覚悟を決める。かくして長親を総大将として無謀な戦いの火蓋が切られるのだった…。
本作は約400年前の史実を基にしたお話です。
主人公の“のぼう様”をはじめ、人間味あふれるキャラクターたちが登場し、それぞれの思惑や駆け引きが描かれていて面白かったです。
忍城のセットの広さは東京ドーム20個分で、合戦のシーンには延べ4千人のエキストラが参加。水攻めのシーンでは沼地の水を吸い上げて再利用し、3000トンもの水が使用されたそうです。迫力ある映像になっていました。
印象的だったのは、やはり長親の田楽踊りのシーンです。地の利、人の利に恵まれたこともあって、優位に戦いを進める忍城方でしたが、それに対して三成は水攻めの戦法を決断。忍城方は一気に窮地に立たされます。そこで長親はある狙いのもとに、敵兵の前で田楽踊りを披露するという奇策に打って出ます。振り付けも歌詞も野村萬斎さんが考えたそうですが、なるほどあの独特な踊りや歌は、野村萬斎さんでなければあそこまで表現できなかったことでしょう。味があって良かったです。特に「ヒョロロン、ヒョロロン」という掛け声が耳に残っています。
ネタバレになるので多くは語りませんが、長親のおかげで忍城方は士気を取り戻し、城外の農民たちも味方につきます。城の最大の防御力とは、城を守ろうとする人々の心であると感じられて感動的でした。
エンドロール中にかつて忍城があった埼玉県行田市の今の様子が映し出されます。いろんな人たちの努力や犠牲の積み重ねの上に今という時代が存在するということが感じられてなんだか感慨深かったです。
強い者に服するというのが当たり前の世の中をよしとせず、不屈の魂で戦いに挑んだ忍城方の人々の姿に勇気をもらいました。

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