オブリビオン (トム・クルーズ)

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トム・クルーズは、『トロン: レガシー』で注目を浴びたジョセフ・コシンスキーが監督を務めている映画『オブリビオン』(Oblivion)に主人公・ジャック・ハーパー役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
西暦2077年、地球は荒廃して街も人も姿を消していた。60年前に異星人スカヴが月を破壊して地球を襲撃し、激しい戦争の末、人類は勝利したが、放射能汚染で地球は住めなくなり、土星の衛星であるタイタンへの移住を余儀なくされたからだ。
そんな地球にジャック・ハーパー(トム・クルーズ)とヴィカことヴィクトリア・オルセン(アンドレア・ライズボロー)は任務で駐在していた。任務とは、地球を縦横無尽に飛び回って監視する無人偵察機「ドローン」の修理と巡回警備で、資源を集めるプラントの安全を守ることだった。
ある日、未確認飛行物体が地球に墜落する。ジャックは本部の指示に従わずにただちに現場へ調査に向かう。そこでジャックが発見したのは、宇宙船の残骸と乗組員とみられる数人の人間だった。駆けつけたドローンは敵とみなして次々と人間を殺していく。ジャックはかろうじて謎の女性ジュリア・ルサコヴァ(オルガ・キュリレンコ)を助け出す。
デルタ睡眠で少なくとも60年は宇宙船で眠っていたとみられるジュリアは、なぜか会った事も無いはずのジャックの名前を口にする。ジュリアは執拗にフライトレコーダーの回収を望み、ジャックは仕方なくヴィカが寝ている隙にジュリアと共に宇宙船の墜落現場に向かう。
そんな中、2人は突然何者かに捕えられ、ジャックは連れて来られた先で謎の男マルコム・ビーチ(モーガン・フリーマン)と出会うのだった…。
SF好きであれば、ある程度先が読めてしまう話ではあるものの、映像もストーリーも細部までしっかり作り込まれていたので大いに楽しめました。
本作のテーマは“故郷”でしょう。ヴィカは一刻も早くタイタンに移住したくて、任務を何事もなく終えることに神経を尖らせますが、ジャックは地球に対して時折懐かしさを覚え、規則違反であるにもかかわらず内緒で残骸からレコードや本を拾って密かに享受します。そのことが彼に変化をもたらし、異星人が予測していなかったであろう事態を招くこととなりました。ジュリアやビーチとの出会いもしかりでしょう。本を読むこともなく、ヴィカ以外の人と交わることもなければ、ジャックはあのまま真実を知ることもなく、一見平凡な偽りの日々を繰り返していたことでしょう。しかし彼は違いました。特に彼に影響を与えたと思われる本は『古代ローマの叙事詩』です。ジャックはその中に収録されていたホラティウスの言葉から、人間としてあるべき生き方を学びます。ジャックがホラティウスによる“理想の死”についての言葉を心の中で唱え、「人は皆死ぬ。問題はどう死ぬかだ」と決断する場面が印象的でした。
ジャックとジュリアが捕らえられた先にあった名画、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」も印象的でした。足の不自由な女性が草原に横たわり、丘の上に建つ一軒家を見つめている姿を描いた絵なのですが、それがなんだかジュリアが置かれている状況と重なって感慨深かったです。