ツレがうつになりまして。 (宮崎あおいさん & 堺雅人さん)

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映画『ツレがうつになりまして。』は、細川貂々さんのコミックエッセイを、『半落ち』の佐々部清監督が実写映画化した作品です。
宮崎あおいさんと堺雅人さんが、大河ドラマ『篤姫』以来2年半ぶりに夫婦役で共演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
売れない漫画家のハルさんこと髙崎晴子(宮崎あおいさん)は、夫、ツレこと幹夫(堺雅人さん)とイグアナのイグと暮らしていた。ツレは仕事をバリバリこなし、毎朝自分で弁当を作っていく几帳面なサラリーマン。どちらかと言えばネガティブなハルさんに比べ、ポジティブな性格のはずのツレだったが、ある朝、真顔で「死にたい」と言い出した。
病院での診断結果は、心因性うつ病だった。結婚5年目でありながら、ツレの変化にまったく気づかなかったハルさんは、妻としての自分を反省する。そして、うつ病の原因が会社にあったことから、ハルさんはツレに「会社を辞めないなら、離婚する」と告げた。
会社を辞めたツレは、順調に回復しているかのように見えたが、振り子のように良くなったり、悪くなったりを繰り返した。ツレの退職金と失業保険を使い切り、いよいよ髙崎家の家計は厳しくなってきた。そこでハルさんは編集部へ行き、「ツレがうつになりまして、仕事をください」と頭を下げるのだった…。
うつ病という深刻な題材ではありますが、それをきっかけにこれまでの自分たちの姿を見つめ直し、共に成長していく夫婦の絆を描いた物語になっています。病気の話というよりも夫婦の話がメインになっていて、重苦しい雰囲気ではなくて、実に心温まる夫婦愛が描かれていました。作中でハルさんが描く一コマ漫画の日記もユニークで、ハルさんの気持ちを表現するとともに、映画全体の雰囲気をほんわかさせる役割も果たしているように感じました。
ツレの勤務先の後輩・小畑(中野裕太さん)、ツレが通院先で出会った同じうつ病患者・杉浦(吹越満さん)、ハルさんの行きつけの骨董屋店主・川路(犬塚弘さん)、ハルさんの父・栗田保男(大杉漣さん)、母・里子(余貴美子さん)、毎回ツレを指名してクレームをつけまくっていた“できない”さんこと三上隆(梅沢富美男さん)などもいい味を出していました。
読者人気を獲得できず、連載が打ち切りになってしまったハルさんでしたが、家計を支えるために再び仕事、漫画と向き合います。挿絵の仕事をやらせてもらっている編集部の人に「本当に自分の描きたい漫画を描いていましたか?」と尋ねられて、ハルさんがはっとする場面が印象的でした。
ツレがうつ病になった“原因”ではなく、“意味”を考えるようになるまでに成長したハルさん。そんなハルさんは「明けない夜はない。たとえ明けた空が曇りだとしても、夜よりはずっと明るいのだから」と、すっかりポジティブな視点から物事を見るようになっていました。苦楽を共にして互いに成長し、ある意味本当の夫婦になっていったハルさんとツレ。私もそのような人生のパートナーがほしいと思いました。