天地明察 (岡田准一さん)

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映画『天地明察』は、第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞した冲方丁さんの同名時代小説を、『おくりびと』の滝田洋二郎監督が実写化した作品です。
岡田准一さんは、安井算哲(のちの渋川春海)役で出演しています。
先日、試写会で鑑賞しました。公開は9月15日です。
●導入部のあらすじと感想
安井算哲(岡田准一さん)は、徳川家に仕える碁打ちの名家の息子として生まれ、将軍に囲碁を教えることを生業としている。星の観測や算術が好きな算哲は、ある日、算術の設問が掲げられた神社で村瀬えん(宮崎あおいさん)と出会い、心惹かれる。さらに彼女の兄で算術家の村瀬義益(佐藤隆太さん)を通じ、算術の天才・関孝和(市川猿之助さん)の存在を知る。
そんな中、すでに勝敗の決まった対局を将軍の前で披露する習わしに疑問を感じていた算哲は、天才的な若手碁打ち・本因坊道策(横山裕さん)の誘いもあり、禁じられていた碁の真剣勝負を将軍・家綱(染谷将太さん)の前でやってしまう。そんな算哲に興味を持った会津藩主の保科正之(松本幸四郎さん)は、日本全国で北極星の高度を測ってそれをもとに緯度を割り出す“北極出地”の任務を算哲に命じる。
算哲は観測隊の隊長・建部伝内(笹野高史さん)や伊藤重孝(岸部一徳さん)たちと過酷な北極出地の旅を続ける中、暦がずれていることを知らされ、実際に目の当たりにする。
一年半にも及ぶ任務を終えた算哲は、幕府に改暦を進言。算哲に夢を託した建部や伊藤、恩師・山崎闇斎(白井晃さん)たちから推薦され、算哲は異例とも言える、改暦事業の総大将に任命される。かくして算哲の未知なる天を相手とする“真剣勝負”が幕を開けるのだった…。
多くの人々が、地球が丸いことさえ知らなかった江戸時代初期に、日本初の暦作りに挑戦した実在の人物・安井算哲(のちの渋川春海)の物語です。
日本では6世紀に中国から遣唐使を通じていくつかの暦がもたらされ、平安時代初期から宣明暦が使われるようになりますが、中国の都を基準にして作られたものだったので、日本とは経度による誤差がありました。その後800年以上宣明暦を使い続けた結果、江戸時代初期には暦は2日ほどのズレが生じるまでになっていました。
この時代の暦は生活の基盤であると同時に、宗教・政治・経済にまで影響を及ぼし、暦を司る者が国を治めるほどの意味を持つ重要な存在だったようです。本作では、算哲たちの改暦事業は、改暦により権力が朝廷から幕府に移ることを恐れた公家の陰陽博士 ・宮栖川友麿(市川染五郎さん)たちによって妨害されます。利権を持つ者が、都合の悪い真実を覆い隠そうとするのは世の常ということでしょうか、なんだか現在にも当てはまっている感じで悲しい限りです。でも算哲はあきらめません。いろんな人に助けられ、支えられながら、挫折や失敗を乗り越えてまっすぐに生き抜く算哲の姿が感動的でした。算哲の後ろ盾的存在である水戸光圀(中井貴一さん)の「泰平の世で恐ろしいのは、新しい息吹をかき消すこと」といった言葉も妙に印象的でした。
私も算哲のように、挫折しても失敗してもあきらめず、精進し続ける人生を送りたいと思いました。