探偵はBARにいる (大泉洋さん)

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大泉洋さんが主演を務める映画『探偵はBARにいる』は、東直己さんの小説『ススキノ探偵シリーズ』の第2作「バーにかかってきた電話」を基に、テレビドラマ『相棒』シリーズにも携わっている橋本一監督が映画化した作品です。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
札幌の歓楽街・ススキノのBAR「ケラーオオハタ」を根城にしている探偵である俺(大泉洋さん)は、いつものようにそのBARで相棒兼運転手の高田(松田龍平さん)と酒を飲み、オセロに興じていた。そこへ“コンドウキョウコ”と名乗る女性から電話が入る。それは仕事の依頼で、南という弁護士に会って「去年の2月5日、カトウはどこにいたか」と尋ねてその反応を見るという奇妙なものだった。危険な匂いを感じた探偵は断ろうとしたが、「あなたしか頼れないので」との言葉に乗せられて結局引き受けてしまう。
探偵が依頼を実行したところ、その直後に拉致されて雪に埋められ、半殺しの目に遭う。再び“コンドウキョウコ”から電話が入り、探偵は怒りながらも不可解な依頼を渋々こなすが、最初に自分を拉致したグループに対する怒りが収まらず、自力で報復しようと依頼の実行と並行して高田と共に調査を開始する。そんな中、浮かび上がったのは、謎の美女・沙織(小雪さん)と今は亡き大物実業家・霧島敏夫(西田敏行さん)だ。やがて探偵は複数の殺人事件に直面するのだった…。
酒好きで美女に弱いが、“探偵は依頼人を守らなければならない”というポリシーを持つ人間味あふれる探偵と、マイペースで居眠りばかりしている北大農学部の研究助手だが、空手道場の師範代という肩書きを持ち、ケンカとなると滅法強い相棒兼運転手の高田。そんな2人の掛け合いが面白かったです。
探偵を拉致して雪に埋めたグループの主犯格の男(高嶋政伸さん)や、探偵の飲み友達で両刀使いである北海道日報新聞記者・松尾(田口トモロヲさん)、探偵とは腐れ縁である桐原組の若頭・相田(松重豊さん)もいい味を出していました。
アクションシーンも、失礼ながらあまり期待していなかったのですが、意外と多くて嬉しい誤算でした。特にスノーモービルが登場する、探偵&高田と花岡組の関係者たちとの格闘シーンは印象的でした。
昭和レトロな雰囲気も個人的には気に入りました。名前が明かされない主人公の探偵は、今時携帯も持たず、行きつけのBARを事務所代わりにしています。しかもBARの電話は黒電話です。探偵が通う喫茶店「モンデ」も、看板娘・峰子(安藤玉恵さん)を含めて昭和の雰囲気が漂っていました。高田が運転する車は年代物のようですがおんぼろで、そこがまた味があってよかったです。
依頼はすべて電話を通して行われ、依頼人の正体が謎に包まれているという形で話が進むのですが、残念だったのは、最初から電話の声で依頼人が誰なのかが分かってしまうところです。最初はわざとそういう演出なのかなとも思いましたが、わざわざあの女優さんをああいう登場の仕方にしていることを考えると、分かっていることが前提というわけでもないようです。そういう意味では謎解き要素は薄くなってしまっていますが、人間関係や過去の複数の事件の繋がりが明らかになる過程はなかなか楽しめましたし、物悲しい結末も印象的でした。
なにはともあれ、前述したように探偵と高田の名コンビぶりは魅力的でした。本作はシリーズ化を念頭に制作されたらしいです。エンドロール後の2人のやり取りも面白く、続編を匂わせる終わり方でした。実際に早くもシリーズ第2作の制作が決定したそうです。