シュガー・ラッシュ (Wreck-It Ralph)

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映画『シュガー・ラッシュ』(Wreck-It Ralph)は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品です。監督は本作で長編映画デビューを飾ったリッチ・ムーア監督で、アメリカの長寿TVアニメシリーズ『ザ・シンプソンズ』で腕を磨いた人です。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
ゲームセンターの閉店時間が過ぎると、そこではもう1つの世界が始まる。人間たちの姿がなくなると、プログラムに従って人間たちを楽しませていたゲーム・キャラクターたちが、ゲームの世界で動き始めるのだ。彼らは電源コードを辿って他のゲームに顔を出したりして交流を深めている。
そんなアーケードゲームの1つ「フィックス・イット・フェリックス」に登場する大男・ラルフは不満を抱いていた。ゲームの主人公・フェリックスがアパートビルの住人たちから慕われ、アパートの立派な部屋で暮らしているのに対し、自分は悪役であることから厄介者扱いされて、住む家もなくゴミ捨て場に一人きりで暮らすはめになっているからだ。悪役たちのグループセラピー“悪役の会”で心情を吐露しても、役割は変えられないんだから今の現状を受けいれるべきだという答えしか返ってこなかった。
そんなある日、セラピーから帰宅したラルフは「フィックス・イット・フェリックス」の稼働30周年記念パーティに自分だけが呼ばれなかったことに気づく。ラルフは半ば強引にパーティに押しかけて住人と口論になる。住人はフェリックスがステージをクリアすると獲得するメダルを引き合いに出し、メダルはヒーローしかもらえず、悪役がもらえるメダルなんか存在しないと言い放つ。怒ったラルフは、ヒーローになるために他のゲームでメダルを獲得しようと飛び出してしまう。
ひょんなことからラルフは、最新バーチャルSFシューティングゲーム「ヒーローズ・デューティ」に潜り込むことに成功する。紆余曲折の末に、敵を撃退して塔のてっぺんに登ると授与されるというヒーローのメダルを獲得したラルフだったが、誤って非常用シャトルを起動させてしまい、コントロールができずにお菓子の国のレースゲーム「シュガー・ラッシュ」に迷い込んでしまう。木の枝にひっかかってしまったメダルを取ろうとする中、ラルフは、生意気な少女・ヴァネロペと出会うのだった…。
まさに『トイ・ストーリー』のゲーム版といった世界観で、同じようにワクワクしました。
ディズニー映画の中に有名ゲームのキャラクターが登場しているのも面白かったです。例えば、『スーパーマリオシリーズ』のクッパ、『ストリートファイターII』のザンギエフとベガ、『ソニックシリーズ』のドクター・エッグマン、『パックマン』のオトボケをはじめとして様々なゲームのキャラクターがカメオ出演という形で登場しています。
ヒロインのヴァネロペのモデルは、日本の女の子だそうです。しかもヴァネロペがいる世界のライバルキャラたちも、日本のいわゆる“原宿ガール”がモチーフだそうです。確かに衣装やヘアアクセサリーなどがポップで華やかでした。
やや短気ですが優しい心の持ち主であるラルフ、ちょっと口が悪いですが明るい性格で人懐っこいヴァネロペをはじめ、礼儀正しく爽やかですが少々子どもっぽいフェリックス、ある悲しい過去を持つ美しくてタフな女軍人・カルホーン軍曹、常にハイテンションでどこかずる賢い一面を持っているキャンディ大王など、登場人物もそれぞれ個性的でいい味を出していました。
ゲーム世界では、ある事件が原因で「自分が本来いたゲーム世界を捨てて、別のゲーム世界を乗っ取る行為」を「“ターボ”する」と呼ぶようになっていて、ゲーム世界を消滅させる最悪の行為としてご法度になっています。それがレースゲーム「シュガー・ラッシュ」の世界とヴァネロペに隠された秘密に繋がっていて、とてもよく出来ていると思いました。
嫌われ者のラルフと仲間はずれにされているヴァネロペ。いわば孤独な者同士の2人が手を組み、次第に友情の絆で結ばれていく過程や、悪役にうんざりしていたラルフがどのように変わっていくのかも見どころでしょう。
AKB48の楽曲「Sugar Rush」が全世界共通の挿入歌&エンディング曲に起用されています。レースゲーム「シュガー・ラッシュ」の世界の雰囲気に結構マッチしていると思いました。
同時上映は、短編アニメーション『紙ひこうき』(Paperman)でした。あるビジネスマンがひょんなことから出会った女性に一目惚れし、その後再び偶然オフィスのビル越しに彼女を見つけ、紙ひこうきを使って自分に気づいてもらおうと奮闘するお話です。愛の始まりをロマンチックかつファンタスティックに描いています。一見するとどこか懐かしい何気ないモノクロのアニメーションですが、3DCGのモデルによるアニメーションを作成してからその上にアニメーターが2Dの輪郭線などを描き重ねるという新しい手法、技術が用いられているそうです。