ストロベリーナイト (西島秀俊さん)

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西島秀俊さんは、映画『ストロベリーナイト』に菊田和男 役で出演しています。
同作はテレビドラマ『ストロベリーナイト』の劇場版で、誉田哲也さんの警察小説である姫川玲子シリーズ第4作『インビジブルレイン』が原作です。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
小林充(金子ノブアキさん)という暴力団員が殺害される事件が発生する。同じ管轄内で起きた他の殺人事件と手口が似ていることから、警察は連続殺人事件とみて合同特別捜査本部を設置。姫川玲子(竹内結子さん)ら警視庁捜査一課は、組織犯罪対策第四課(組対四課)と合同で捜査することになった。
そんな折、姫川は捜査本部にかかってきた「小林充を殺したのは柳井健斗」という不審なタレコミ電話を受ける。ところが、上層部からは「柳井健斗には触れるな」との命令が下る。納得のいかない姫川は、部下の菊田和男(西島秀俊さん)に姫川班を託し、自身の信念に従って独自に単身捜査に挑む。
一方、龍崎組若頭補佐・極清会会長の牧田勲(大沢たかおさん)も柳井(染谷将太さん)の事を探していた。牧田と姫川は柳井健斗のアパートの前で出会うのだが、牧田は暴力団員であることを隠して姫川に近づくのだった…。
『ストロベリーナイト』は、表題作を含む「姫川玲子シリーズ」と呼ばれる一連の小説が原作です。今回の劇場版の原作小説『インビジブルレイン』はシリーズ最高傑作ともいわれていて、以降の物語の方向性を決定づけるラストが話題を呼んだそうです。
本シリーズの主人公は、17歳の夏に暴漢に襲われ、心に深い傷を負った姫川玲子です。テレビドラマでは、男社会の警視庁捜査一課で“お嬢ちゃん”と蔑まれ、組織内の軋轢に苦しみながら、主任として自ら率いる姫川班の仲間と共に全力で事件に挑む姿が描かれました。本作劇場版では、警視庁上層部の圧力に晒され、誰にも頼れない状況下での姫川の単独捜査がメインとなります。自分の部下を巻き込むわけにはいかないと、単独で事件の謎に挑もうとする姫川。しかしやがてピンチに陥り、そこで姫川班の登場です。「俺たちは姫川班です」と、姫川に指示を仰いで動き出す菊田、石倉保(宇梶剛士さん)、葉山則之(小出恵介さん)、湯田康平(丸山隆平さん)ら姫川班が健在でよかったです。もちろん姫川に好意を抱いている井岡博満(生瀬勝久さん)も登場します。井岡が傷心の菊田に「いちごオ・レ」を渡して「人生いろいろ」と語るシーンもよかったです。テレビドラマに引き続き、姫川の天敵のガンテツこと勝俣健作(武田鉄矢さん)とライバルの日下守(遠藤憲一さん)もいい味を出しています。それぞれにまったく違う捜査手法で姫川と競い合ってきたガンテツと日下ですが、本作で姫川ともども上層部から下された“捜査禁止令”に、2人がどう動くのかも見どころの1つといえるでしょう。
姫川の武器は直感と行動力と、犯人の行動を見抜く天性のプロファイリング能力です。反面、犯罪者や捜査対象者の意識に同調する面があり、本作では、心に闇を抱える自分の鏡のような存在ともいえる牧田に強く惹かれてしまいます。部下の菊田は姫川に好意を寄せながら、想いをはっきりと言葉にしたことがありません。そんな菊田が姫川と牧田の接近を目の当たりにする場面が印象的でした。これまで姫川の一番近くで部下として彼女を支えて守り続けてきた菊田は、何を思ったのでしょうか。切ないシーンでした。
本作では雨がほぼ全編にわたって降り続けています。原作のタイトル“インビジブルレイン”(=見えない雨)にもあるように、雨がある意味重要な役割を果たしています。激しいものから静かなものまで実にさまざまな種類の雨が、登場人物の心情を表現するかのように降っています。雨が降っていないシーンもあるにはありますが、“見えない雨”は降っています。それが何なのかを感じて考えるのもまた面白いと思います。
映画公開日の1月26日に土曜プレミアム特別企画としてフジテレビ系列にて放送されたスペシャルドラマ『ストロベリーナイト アフター・ザ・インビジブルレイン』でいわばネタバレしていましたが、映画のラストで姫川班は解散になってバラバラになってしまいます。小説ではさらなる続きも描かれていますので、またスペシャルドラマか連続ドラマとして姫川たちが帰ってきてくれることを期待します。

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