SPEC~結~ 爻ノ篇 (向井理さん & 大島優子さん)

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映画『SPEC~結~ 爻ノ篇』は、 TBSのテレビドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』の劇場版で、シリーズの完結篇二部作の後篇です。
向井理さんはセカイ役で、大島優子さんは謎の白い女こと大人の青池潤 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係の野々村光太郎(竜雷太さん)は、命を賭けて当麻紗綾(戸田恵梨香さん)の元にシンプルプランの小瓶を送ったが、その小瓶は城旭斎浄海(香椎由宇さん)との戦いで、当麻の手のひらの上で割れてしまった。シンプルプランとは、プロフェッサーJなる謎の人物がスペックホルダーを壊滅させるべく創り出した恐るべきウィルスだったのだ。当麻はもろにそのウィルスを浴びてしまったことにより、すさまじい高熱に襲われる。
ところが調査の結果、シンプルプランのウイルスは、ただのインフルエンザウイルスであると判明する。瀬文焚流(加瀬亮さん)や吉川州(北村一輝さん)は安堵するが、当麻は疑問を抱いて推理を始める。そして、湯田秀樹(遠藤憲一さん)の本名が“ユダ(Judah)”であることを突き止め、その正体がプロフェッサーJであることを確信する。当麻たちは急いで湯田のいる警察病院に向かい、その道中で危険を知らせるために、バナナ医者こと場名(渡辺いっけいさん)に連絡をするが手遅れだった。湯田はバナナ医者を殺して身体に憑依し、バナナ医者になりすまして警察病院の地下にある、スペックホルダーたちがかくまわれている秘密の部屋に侵入。それから大人のスペックホルダーたちを次々と虐殺して、子どものスペックホルダーたちにはウイルスを感染させた。
当麻たちが警察病院の地下室にたどり着いた時にはもう湯田の姿はなく、無残に射殺されて血の海に横たわるスペックホルダーたちの死体と、ウイルスに侵されてもがき苦しむ子どもたちの姿があった。子どもたちは別の病院に運び込まれて治療を受けるが、一向に回復の兆しが見えない。それもそのはず、スペックホルダーとそうでない人間にはDNAの違いがあり、スペックホルダーだけはインフルエンザウイルスの治療薬が効かない構造で必ず死にいたってしまうのだ。一時は倒れた当麻が意識を取り戻し、そのことに気づいて湯田の残酷な手口に怒りを爆発させる。そしてついに、瀬文たちの見守る中、左手のスペックを発動させるのだった…。
陰謀論とでも言いましょうか、ペスト、BSEをはじめいろんな流行り病を利用し、古くは魔女狩りと称してスペックホルダーたちを虐殺していた事実が物語では明かされました。フィクションとはいえ興味深かったです。
スペックホルダーの起源も明かされました。太古、地球上の生物はガイアのもと、1つの意思を持つ生命体でした。人類もすべての自然現象と会話し、すべての生物と魂を通わせて生きていました。スペックホルダーとはガイア(=地球)の意思と会話する能力を持つ古き先人類とその末裔のことだったのです。そこに地球外から隕石にのってやって来たアミノ酸が、地球の生物のDNAの中に組み込まれて、一気に勢力を伸ばします。その外来種のいわば雑草が今の人間というわけです。湯田に言わせると人間は「生殖機能と利己主義だけが発達し、感性や知能は低下し、ガイアと会話する能力を失った劣化種族。地面のみを這いつくばって歩くしかない蟻。それが、様々な権謀術数を使い、先人類を滅した」とのこと。そしてガイアが私利私欲に生きる人間に愛想を尽かしたために“ファティマ第三の預言”の刻は来たのだと湯田は主張します。それはどうやら世界をリセットし、また新しく世界の歴史を始めることのようです。セカイ(向井理さん)は“ノアの方舟”で有名な40日40夜続いたとされる大洪水のことを引き合いに出していました。
当麻は、現人類の歴史に終止符を打ち、ガイア由来の先人類の魂を冥界から現実界に戻す扉を司る躯体“ソロモンの鍵”の役割を持っていました。青池潤(大島優子さん)が言うには、ガイアがDNAをかけあわせてつくった、ただの道具の当麻。しかし、人間としての気持ちを持つ当麻は激しく抵抗します。そこへ、一十一こと当麻陽太(神木隆之介さん)、海野亮太(安田顕さん)、志村美鈴(福田沙紀さん)、地居聖(城田優さん)、冷泉俊明(田中哲司さん)、サトリ(真野恵里菜さん)、マダム陰・マダム陽(浅野ゆう子さん)たち“チームスペックホルダー”が平成仮面ライダーのごとく集合し、助太刀します。本格的に一緒に戦うという感じではなかったのが残念でしたが、それぞれのキャラクターの背景が思い出されて感慨深かったです。当麻がチームスペックホルダーをはじめとする仲間たちと協力して、アイデアを駆使する場面も見応えがありました。
最初は完全な悪役に見えた潤でしたが、自分を産んで育ててくれた里子(栗山千明さん)に対しては、“愛情”をあらわしました。セカイはそれを“畜生の感情”、“原始的な本能”と表現して軽蔑します。それに対して当麻が叫んだ「あれは“愛”っつー、最も大事な“人の想い”だ。バカヤロー!」というセリフが印象的でした。
そして、忘れてならないのは瀬文の想いです。セカイが時間を静止させたにもかかわらず、「なめんじゃねぇ。肉体は静止した時間の呪縛の中にいても、精神は一瞬にして千里をかけるんだよ。…スペックなんか関係ねぇ!俺たちの想いが、てめえらに負けるわけがねぇ。この世界はてめえらクソ野郎どもの好きにはさせねぇ。絶対にさせねぇ!!」と、体が動かずとも気迫のみでセカイたちに語りかける場面が印象的でした。友人でも恋人でも家族でもなく、仲間というほど親しい感じでもないですが、戦友という言葉では片付けられない奇妙な関係の瀬文と当麻。お互いの命を預け、いわば魂を分かち合い、すべてを超越した固い絆で結ばれた2人だからこそ成せる素晴らしい終わり方でした。
確かにセカイの言うように、金や国籍や宗教でお互いを差別して利権や主義主張で殺し合うような人間も世の中にはいます。でも、当麻の愛すべき人々のように、自分の命よりも、仲間を、この世界を大事に思う人たちもそれ以上に存在すると信じたいものです。
ラストで「そして再び、歴史は繰り返す。波の行く先のように…」と男の声がして、「行きましょう。朝倉」と女の声が聞こえてきます。刑事ドラマ『ケイゾク』に登場した“朝倉”が連想されてなんだか嬉しかったです。欲を言えば、殉職したとされる真山徹(渡部篤郎さん)は仕方がないにしても、公安部第五課課長兼特務事項担当部長S参事官とみられる柴田純(中谷美紀さん)には登場して欲しかったです。まあ、いろいろ妄想する余地があるのもいいのかもしれません。