流星ワゴン 最終回 (香川照之さん)

kagawateruyuki04

香川照之さんは、TBS系列の毎週日曜夜9時枠にて放送されていた日曜劇場『流星ワゴン』に永田忠雄 役で出演しました。
先日は最終回(第10話)が放送されました。
●あらすじと感想
生霊・忠さんこと永田忠雄(香川照之さん)が姿を消す中、現実の世界の忠雄の死が目前と迫っていました。息子・一雄(西島秀俊さん)を苦しみから救うこと、そして本当の絆を取り戻すことこそが、忠雄の現実の世界では叶えることのできなかったとてつもなく大きな後悔でした。それを幽霊の案内人・橋本義明(吉岡秀隆さん)から知らされた一雄は、生霊・忠さんにもう一度会いたいと思います。そして、忠さんはきっと病院で危篤状態にある自分自身のそばに向かったと確信し、橋本に強引に頼み込んで現在の福山に連れて行ってもらいました。
忠さんと再会した一雄は、忠さんから「起きてしもうたことは変えられんのじゃったら、今こっから変えればええんじゃ。おまえは生きとる。まだ死んどらん。勝負はこっからじゃ」と言われます。忠さんは、目が覚めたらすぐに死が待っていると確信して諦めている一雄を奮起させたかったのでしょう。
橋本の粋な計らいで2人きりになった忠さんと一雄は、忠さんが最後にやり残したことである連れションをしました。忠さんは一雄に「楽しかったのう」としみじみと語りかけ、「おまえは今までのあのワゴンの旅で現実は何も変えられんかったと言うたが、わしはそうは思わん。1つだけ確かに変わったもんがある。おまえ自身じゃ。カズ、生きろよ。諦めるな!ええかすべては今なんじゃ。その今がどんな過去の積み重ねからきとるかが問題なんじゃ。おまえの元の人生の過去は腐っとった。じゃがのう、おまえは橋本の車に乗ってその腐った過去を少しでもちょっとでも変えようと頑張った。血眼になった。血みどろになった。その結果、過去の現実が変わらんかったとしても、そんなことはどうでもええんじゃ。おまえが過去を変えようとして努力して血眼になったその積み重ねで今の新しいおまえはできとるんじゃ。それがあの車の旅の意味じゃ。今のおまえなら絶対に未来を変えられる」と力説しました。それから2人はお互いに礼を言って抱きしめました。忠さんは「カズ、過去じゃろうが未来じゃろうが、生きとろうが死んどろうが、おまえとわしは永遠に朋輩じゃ!」という言葉を残して消えました。
目覚めたらすぐに死ぬというのは、橋本とその息子・健太(高木星来さん)の嘘でした。最初から一雄は死なないことになっていました。これまでにも何人か旅が終わった後、つらい現実に耐えきれずに自ら命を絶ってしまう人がいたので、一雄にだけはそうなってほしくないと思い、一雄の口から“生きる”決意を聞き出すために、橋本と健太は嘘をついて試したのです。
“生きる”決意をした一雄は、橋本と健太に別れを告げて現実に戻りました。やはり家を出た妻・美代子(井川遥さん)からは離婚届を送りつけられ、息子・広樹(横山幸汰さん)は中学受験に失敗して引きこもりになって荒れているという現実は変わっていませんでした。でも一雄は以前の一雄とは違います。妹・智子(市川実和子さん)から父・忠雄の危篤の知らせを受けた一雄は、問答無用に息子・広樹を連れて、忠雄のいる福山の病院に駆けつけました。痛みを抑える薬で眠っていてもう意識は戻らないという忠雄に、一雄は謝罪と後悔の念を口にしました。すると忠雄が奇跡的に意識を取り戻し、「カズ、生きとったか」とか細い声で言います。一雄は「生きてるよ。俺生きるから。俺生きる。俺生きてくから」と答えました。それに対し忠雄は「さすがはわしの朋輩じゃ」と言い、驚いて一雄が「親父…」と言うと、忠雄は「忠さんじゃ」と答えました。生霊・忠さんと一雄のワゴンの旅の記憶を、現実の忠雄も共有していたようです。安心したようにそのまま忠雄は息を引き取りました。
後日、喪服を取りに戻った一雄は、玩具の「黒ひげ危機一髪」を見つけて驚きます。それはワゴンの旅で忠さんが買ったものです。それと一緒に遊園地で忠さんと大観覧車に乗った際に2人で撮った記念写真もありました。子どもの字で「カズおじちゃん あんど チュウさんへ」というメッセージも添えられていて、どうやら健太からのプレゼントのようです。
一雄は広樹と一緒に福山の実家に引っ越し、ゼロからやり直すことにしました。それから美代子と再会して離婚届を渡し、「どうするかは君が決めてくれ。だけど俺は待ってる」と伝えました。広樹はいじめっ子たちと会って、「おまえらにやられたことは絶対許せない。だけど、最初にムカつくような態度を取った俺も悪かった」と言って謝罪しました。それから「今度引っ越す所はすごくいい所だから、いつか遊びに来いよ」と言って笑顔で別れを告げました。その様子を一雄は離れた所で優しく見届けました。
半年後。忠雄が人生をかけてつくり上げた丸忠コーポレーションは、娘婿・伸之(高橋洋さん)が引き継ぐことになりました。伸之から父・忠雄の跡を継いでほしいと言われた一雄でしたが、自分にはそんな資格はないとして断ったのです。一雄は漁師として働き始めました。広樹はもうすっかり福山の生活に馴染んだようです。この半年間一度も連絡が無かった美代子ですが、福山を訪れてきました。一雄はそんな美代子を呼び止めて対面します。その様子を実は成仏していなかった忠さんが見守りながら「カズ、勝負はこれからじゃ。未来で勝ち越せよ」と密かにエールを送ります。笑顔を見せ合い、一雄が美代子のもとに歩み寄ったところで物語の幕は閉じました。
現実の忠雄は、見舞いに来た一雄を見て同じ年だった頃の自分を思い出して、自分たちは親子としてはダメだったけど、朋輩として出会っていたらどうだったんだろうかと思い、その思いが無意識のうちに生霊・忠さんを生み出して一雄に会わせたということのようです。ワゴン自体は忠さんとは関係無いようですので、一雄にとっては一気に2つの奇跡(=魔法)に遭遇したことになります。なにはともあれハッピーエンドでよかったです。