ラッシュ (クリス・ヘムズワース & ダニエル・ブリュール)

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映画『ラッシュ/プライドと友情』(Rush)は、F1レーサーのニキ・ラウダとジェームス・ハントが壮絶なタイトル争いを繰り広げたドラマを映画化した作品です。監督は『ダ・ヴィンチ・コード』などで知られるロン・ハワードが務め、ハントをクリス・ヘムズワース、ラウダをダニエル・ブリュールが演じています。
先日、試写会で鑑賞しました。来週2月7日から全国公開されます。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
1976年、 性格もレーススタイルも相反するF1レーサーのニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)が激しい首位争いを繰り広げていた。
時はさかのぼって1970年、F3のレースでハントとラウダは運命的な出会いを果たす。F3ではすでに人気を博していたハントが攻撃的なアタックを仕掛け、新人のラウダはクラッシュ寸前。表彰台ではしゃぐハントにラウダは腹を立てる。
その後、ラウダは、たぐい稀な交渉力を武器に自らの生命保険を担保にして銀行の融資を取り付け、F1チームに加入。すぐさま軽量化・馬力アップなど車体改良に着手し、オーナーやメカニックたちの信頼を勝ち得る。一方、ハントは、F3時代からのスポンサーで友人関係にあったアレクサンダー・フェルマー・ヘスケス卿(クリスチャン・マッケイ)が自腹でチームを設立したことで、ラウダを追ってF1参戦を果たす。
フェラーリに移籍したラウダは、1975年、速さと安定した走りでポイントを重ね、ワールドチャンピオンへと登り詰める。そして1976年のシーズンも中盤まで独走状態。春に結婚もした。対するハントは、1975年オランダGPで初優勝を達成するものの、ヘスケス卿が資金難でF1から撤退。マクラーレンへ移籍するハントだが、1976年のシーズン途中からの車両規則変更によって優勝を失格処分で取り消されたり、妻と離婚したりと公私ともに波乱続き。ところが一度吹っ切れると1976年フランスGPで優勝し、ラウダを追い上げていく。
そして舞台はニュルブルクリンクで開催の1976年ドイツGP。F1界では“墓場”と呼ばれる最悪のコースで、しかも決勝当日は前日の雨の影響で路面が濡れていてコースの一部では雨が降り始めていた。そんな中、大事故が起こるのであった…。
30台以上のカメラを駆使し、ドライバーのヘルメットにもカメラを取り付けて撮影を行ったという本作のレースシーンの映像は、本当に迫力があって衝撃的でした。
自由奔放で情熱型のハントは、与えられた車から瞬時にして100%の力を発揮する術に長けています。そのドライビングスタイルは常に死と隣り合わせであるがゆえに、毎日が人生最後の日として生を謳歌しています。それに対し、完璧主義者で頭脳派のラウダは、マシンを徹底的に理解して冷静かつ計算高く王座を獲りに行きます。ある意味レースをビジネスと捉えていて20%のリスクしか認めません。そんな正反対ともいえる2人が繰り広げるライバル対決が、プライド、嫉妬、友情、情熱、ロマンといった要素と共に描かれ、レースシーンだけではなく人間ドラマもリアルでした。
ラウダは、瀕死の重傷からわずか42日で奇跡の復帰を果たしました。レース決行を主張したことを悔いて謝罪するハントに、ラウダは「そうだな。だが、テレビで君の勝利を見て生きる闘志が湧いた。僕をここに戻したのも君だ」と言いました。仲が良かったわけではありませんが、きっと2人は互いに高め合う“友”として心のどこかで理解し合っていたのかもしれません。ハントが命に代えてもラウダに勝ちたかったと言い、ラウダがハントのことをライバルの中で唯一嫉妬した男と表現していたのも印象的でした。