リアル・スティール (ヒュー・ジャックマン)

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映画『リアル・スティール』(Real Steel)は、『ナイト ミュージアム』のショーン・レヴィが監督を務め、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のヒュー・ジャックマンが主演を務めています。製作総指揮にはスティーヴン・ スピルバーグ、ロバート・ゼメキスなども名を連ねています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
優秀なボクサーだったチャーリー・ケントン(ヒュー・ジャックマン)は、チャンピオンになるために妻や子を捨ててまで打ち込んできたが、人々がより過激な殺し合いを望んだことにより、ロボット格闘技“リアル・スティール”が台頭してきて、そのせいで生き場所を失った。今では古くからの女友達ベイリー(エヴァンジェリン・リリー)に支えられながら、辛うじてロボット格闘技のプレイヤーとして細々と生計を立てている。
そんな中、裁判所からの呼び出しが来る。別れた妻が亡くなったため、息子マックス(ダコタ・ゴヨ)の養育はどうするかを決める必要があったからだ。子どもなど面倒くさいと考えるチャーリーは、セレブな義妹デブラ(ホープ・デイヴィス)に養育権を譲ることにする。しかも金に困っているチャーリーは、デブラには内緒でその夫から、デブラ夫妻が旅行に出かけている夏の間だけマックスを預かるという条件で金を受け取る約束をした。かくして、チャーリーとマックスはしばらくの間だけ共に暮らすことになった。勘の鋭いマックスは、チャーリーが金を受け取ったことを見抜いて怒り、父子の関係は早々に最悪の状態だ。
そんなある日、チャーリーとマックスは、ロボットの部品を探すためにゴミ捨て場に忍び込む。そこでマックスはひょんなことからスクラップ同然の旧型ロボット“ATOM”を発見するのだった…。
原作はリチャード・マシスンの短編小説「リアル・スティール」(旧題「四角い墓場」)です。
映画の予告編だけでなんとなくストーリーが想像つく感じだったので、正直あまり期待していなかったのですが、なかなかどうして興奮し、感動しました。
メインは、旧型ロボットとの運命的な出会いによって、夢に破れて希望を失っていた父親が愛を知らない息子と絆を結び、再び立ち上がろうとする物語です。「俺はおまえにできることはすべてやった。他に俺にどうしてほしいんだ」と主張するチャーリーに、マックスが「僕のために闘って!」と言う場面が印象的でした。チャーリーは息子マックスの強い想いに後押しされ、運命を大きく変えていくのです。親は子どもの模範となる存在であるべきですが、親だって人間なので間違いは犯します。大切なのは、いざという時に子どものために立ち上がって闘ってやれるかどうかだということをあらためて感じました。あきらめがちな性格になっていたチャーリーでしたが、マックスのおかげであきらめない強い心を身につけ、未来は自分の手で変えることができるということを体現するのです。
興味深かったのは、旧型ロボット“ATOM”の存在です。ATOMは人の動きを見てそっくりそのまま真似をする“シャドー機能”を装備しています。マックスはその機能を使ってATOMがあたかも理想の父親になるように強くしようと努めます。一方、チャーリーはその機能によりあたかも子どもにボクシングを教えるかのごとくATOMに接します。いわばシャドー機能がチャーリーとマックスの距離を近づけ、さらにはラストの展開で重要な役割も果たしています。
ロボットの対決シーンも迫力があって見ごたえがありました。激しい戦闘シーンでは、人の動きを取り込んで映像化する“モーションキャプチャ”が使用されていて、リアリティあふれる戦いが実現されていました。その動きをつけたのは、元ボクシング世界チャンピオンのシュガー・レイ・レナードです。レナードはヒュー・ジャックマンのコーチ、トレーニングも担当したそうです。
ストーリーはシンプルで王道ゆえに、細かいことが気になる人や変化球が好きな人には不向きかもしれません。でも素直な気持ちで見れば、純粋に楽しめるでしょうし、メッセージが伝わって心を動かされることでしょう。人と人との絆や強い想いが人生を切りひらくといったメッセージが込められた本作は、ある意味今の世相にぴったりだと思いました。

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