海月姫 (能年玲奈さん)

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映画『海月姫』は、東村アキコさんの同名漫画を実写映画化した作品です。『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』や『映画 ひみつのアッコちゃん』などの川村泰祐監督がメガホンを取っています。
能年玲奈さんは、倉下月海 役で出演しています。
先日、J:COMオンデマンドによる先行試写会で鑑賞しました。
●導入部のあらすじと感想
20歳を迎えた倉下月海(能年玲奈さん)は、小さい頃に亡き母が言っていた「女の子はみんな大人になったらきれいなお姫様になる」という言葉もむなしく、恋愛はおろか男の子としゃべることもできない、クラゲオタクの女性になっていた。イラストレーターを目指して鹿児島から上京した月海が住むのは、風呂・トイレ共同、男子禁制の昭和レトロな外観のアパート「天水館(あまみずかん)」だ。ここの住人は、三国志、鉄道、和物、枯れ専などジャンルは違えど各々の趣味に没頭するオタクで独身、恋人もいない。「男を必要としない人生」をモットーとして、自分たちを“尼~ず”と称し、外部との接触を避けてまったりと楽しいぬるま湯のような日々を送っていた。
そんなある日、月海は行きつけの熱帯魚ショップ「ぷかぷか」で、お気に入りのタコクラゲ・クララが店員の誤った飼育方法のせいで死にかかっているのを目撃して愕然とする。クララを救出すべく店員に交渉を試みるも、元来の対人下手からうまく説明できず、店員から気持ち悪がられて追い出されてしまう。そこに偶然通りかかったオシャレ女子(菅田将暉さん)が月海から事情を聞き、月海に代わって店員に説明してクララを助けてくれた。月海は成り行きでそのオシャレ女子を部屋に泊めてしまうが、翌朝、彼女の正体は、なんと蔵之介という名の男性で、女装趣味なだけでオカマでもないことが判明する。月海は、尼~ずの面々にバレないよう必死にごまかし、蔵之介を追い返そうとするのだが、蔵之介は一向に気にする様子がない。それどころか女子“蔵子”として天水館を出入りするようになる。
月海たちと蔵之介が交流を深める中、天水地区の再開発事業計画が持ち上がって、天水館取り壊しの危機が訪れるのだった…。
好きなことには集中力を発揮するのに他の部分は全然自信が持てないクラゲオタクの月海をはじめ、三国志オタクのまやや(太田莉菜さん)、鉄道オタクのばんばさん(池脇千鶴さん)、天水館のオーナーの娘で和物オタクの千絵子(馬場園梓さん)、枯れ専のジジ様(篠原ともえさん)たち尼~ずの個性が強烈で面白かったです。
そしてなんといっても尼~ずのぬるい日常を揺るがす女装男子・蔵之介がいい味を出していました。彼は政治家の家に生まれながらもファッションの世界で生きることを夢見ています。尼~ずと蔵之介の対比が見事で、相反するとも言える2つの世界が交わって新しいものを創り出していく過程が興味深かったです。尼~ずの目を覚まさせた蔵之介の「あのドレスはおまえらがやっと手にした武器なんだ!今戦わなくていつ戦うんだよ!また諦めて引きこもるのか?だったら一生引きこもってろ!このあわれなニートどもめ!俺は一人でもやるぞ。絶対諦めないからな!おまえらに見してやるよ。ドレスで世界が変わるってことをな!」というセリフが印象的でした。
蔵之介の兄で女性に免疫のない奥手なエリート・修(長谷川博己さん)も忘れてはいけません。修は、蔵之介にメイクアップされた月海に遭遇して一目惚れするのですが、後日、ノーメイク・おさげ髪の月海と再会した際は気づきませんでした。クラゲを見る月海の横顔を見てようやく同一人物だと気づいた修が、月海に握手を求めるシーンも印象的でした。
鯉淵家の運転手を務めていて、修とは幼馴染でメルセデス・ベンツをこよなく愛する花森よしお(速水もこみちさん)や、いわゆる地上げ屋で天水地区の再開発を推し進め、修に色仕掛けで迫る稲荷翔子(片瀬那奈さん)も物語にいいアクセントを与えていました。
蔵之介と尼~ずたちは大勝負としてファッションショーを開催しますが、その場面でVIP関係者としてファッションデザイナーであるドン小西さんとともに、原作者の東村アキコさんがカメオ出演していました。
なにはともあれ、月海の淡い恋と成長、そして大事なものを守るために一致団結する蔵之介と尼~ずたちの奮闘ぶりが楽しかったです。

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