君の名は。 (your name.)

kiminona
アニメーション映画『君の名は。』は、『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』などの新海誠さんが原作・監督・脚本を務めています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想(ネタバレ注意)
ある日、東京に暮らす男子高校生の立花瀧(声:神木隆之介さん)と田舎町に暮らす女子高校生の宮水三葉(声:上白石萌音さん)は、お互いの意識が入れ替わっていることに気付く。入れ替わりは不定期で週に2、3度訪れ、タイミングは眠った後で、原因は不明だ。最初は、入れ替わっていた時の記憶は目覚めるとすぐに不鮮明になってしまっていたが、入れ替わりの体験を意識するようになってからは少しはキープできるようになってきた。
そして2人はスマートフォンに日記やメモを残し合うことで、入れ替わった状態の時にあった出来事の情報を共有するようになった。メールや電話も試したがなぜかどちらも繋がらなかった。お互いの生活を守るためにルールを決めたりしたが、2人とも破ってばかりだ。時に相手に怒りを覚えることもあったが、それぞれ自分の環境では味わえない体験をして楽しむようになる。
見知らぬ者同士であった2人は日記やメモを通してコミュニケーションを取るようになり、すっかりお互いに打ち解けてきた。そんな矢先、突然入れ替わりが起きなくなってしまう。瀧は三葉の身に何かあったのではないかと心配し、直接会いに行くことにする。しかし、手掛かりは岐阜県飛騨地方ということと、自身が描いた町の風景だけだ。そんな無謀とも言える瀧の探訪に、同級生の藤井司(声:島崎信長さん)とバイト先の先輩の奥寺ミキ(声:長澤まさみさん)が半ば強引に同行するのだった…。

瀧は都心のマンションに父親と住み、建築や美術に興味があって友人たちと内装がオシャレなカフェを巡って楽しんでいます。それからアルバイト先であるイタリアンレストランのマドンナ・奥寺先輩へ密かに好意を寄せています。三葉は田舎住まいと家系の神社の風習に嫌気が差し、東京の華やかな生活に憧れています。それから母親は亡くなっており、町長でもある父は家を出てしまっていて、妹と祖母と3人で暮らしています。そんな縁もなく距離等が離れた2人が、入れ替わりという特殊な状況で出逢って特別な感情を抱くまでになる過程、そして、1200年に一度地球に接近するティアマト彗星をめぐる奇跡の物語が描かれていました。
印象的だったのは、やはり圧倒的に美しい風景です。登場人物の気持ちにリンクしていたりして、その美しさが物語の世界観をいっそう引き立てていました。
登場人物が心の内を語るモノローグも印象的でした。繊細でどこか詩的で、普段はあまり使わないような言葉でも身近に感じられるような言い回しになっていて、それがファンタジーとリアルの両方を表しているように感じられました。
新海監督は、本作のインスピレーションを小野小町の和歌「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」や、平安時代後期に成立した『とりかへばや物語』から得たそうです。三葉の家系が神社であることや、物語でカギとなる“カタワレ時”というオリジナルの地元言葉も万葉集からヒントを得ていて、文学的なエッセンスが物語のそこかしこに散りばめられており、ある種の余韻を生んでいました。
三葉の祖母で宮水神社の神主・一葉(声:市原悦子さん)の「糸を繋げることもムスビ、人を繋げることもムスビ、時間が流れることもムスビ、全部同じ言葉を使う。それは神さまの呼び名であり、神さまの力や。ワシらの作る組紐も、神さまの技、時間の流れそのものを顕しとる。寄り集まって形を作り、ねじれて絡まって、時には戻って、途切れ、また繋がり。それが組紐。それが時間。それが、ムスビ」といったセリフも印象的でした。本作の中核はまさにそれで、組紐が様々な繋がりを示すアイテムとして効果的に用いられていました。
人は良くも悪くも忘れてしまう生き物です。でもそれに抗おうともがいて手を伸ばし続けることに意義を見出せる生き物でもあると思います。そしてその先に“希望”があると信じ続けたいものです。
作画監督は『もののけ姫』などの安藤雅司さん、キャラクターデザインは『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』シリーズなどの田中将賀さんが務めています。RADWIMPSの音楽も本作の世界観にマッチしていました。
ちなみに『言の葉の庭』をご覧になったことがある人であれば、三葉の通う学校の国語教師に親しみを感じることでしょう。