ヒーローマニア 生活 (東出昌大さん)

higashidemasahiro

映画『ヒーローマニア-生活-』は、福満しげゆき氏の漫画『生活【完全版】』を実写化した作品です。
東出昌大さんは、主人公・中津秀利 役で出演しています。
昨日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
東京から新幹線で2時間ちょっとのところにある堂堂市。市内にある“なごみ商店街”は、シャッター通りと化し、不良たちのたまり場になっていた。
その近所のコンビニでアルバイトをしている中津秀利(東出昌大さん)は、ひょんなことから驚異的身体能力を持つニートの土志田誠(窪田正孝さん)と出会う。日頃から世の中の不条理に疑問を抱いていた中津は、腐った街を一緒に掃除しようと土志田に提案。夜だけならいいとの返事をもらった。
中津と土志田は早速、ホームレス相手に花火で嫌がらせをして騒いでいる不良たちを退治しようとする。しかし2人は意外と手こずってしまいピンチに陥る。そんな中、“若者殴り魔”としてニュースで騒がれているオジサン・日下孝蔵(片岡鶴太郎さん)が現れる。両腕に忍ばせていたカナヅチを駆使して次々と不良たちを倒す日下。ターゲットである若者であることから中津たちまで倒そうとするが、中津の意見に同調して仲間入りする。中津のアイデアで中津、土志田、日下の3人は、倒した不良たちを生きたまま通りに吊るした。見せしめのためだ。その現場を目撃した女子高校生・寺沢カオリ(小松菜奈さん)は、吊るす一部始終を動画に収める。
翌日、カオリは中津たちのもとを訪れ、動画を見せた上である選択を迫る。それは、警察に通報されるか、自分を仲間に入れるかのどちらかを選ぶというものだった。
かくして中津、土志田、日下、カオリの4人は、社会が裁ききれない小さな悪を退治して、高い所から吊り下げて晒す行為を始める。やがて彼らは“吊るし魔”と呼ばれるようになるが、市民から賛同を得るようになる。自警団“TURUSI-MA”の誕生である。
そんな中、街には黄色いレインコートを着た殺人者が出没するようになる。カオリがその殺人者を倒そうと提案するが、中津は本当の人殺しが相手ではさすがに自分たちの役目ではないと反対。そこで日下は「時が来た」として、中津たちにホームレスの宇野正(船越英一郎さん)を引き合わせる。人材派遣会社を経営していたという経歴を持つ宇野は、中津たちの活動を末永く続けてもらうための手段として、TURUSI-MAの法人化を提案するのだった…。
決してケンカが強いわけでも人より優れた能力を持っているわけでもなくヘタレですが、一歩踏み出した中津。元下着泥棒で社会性ゼロですが、手首に仕込んだ分銅付ワイヤ射出装置を駆使した空中移動や武術に長けていて、栄養ドリンクを持ち歩いている土志田。三つ編みおさげに丸眼鏡で一見地味ですが、抜群の情報収集力を持つカオリ。中津たちの仲間でありながらも、どこか父親的存在で見守ってくれる日下。ホームレスから社長に成り上がり、政治家のような雰囲気を身にまとう宇野。いつもブツブツと何かを呟いていて、異様な存在感を放つオカッパおばさん(山崎静代さん)など、登場人物が個性的で面白かったです。特に中津の愛嬌のあるダメっぷり、土志田や日下のアクション、カオリのキュートさとギャップが印象的でした。
宇野は「人は変わらない」と言いましたが、日下は「人は変わる」と主張しました。確かに宇野は変わりませんでしたが、中津は変わりました。変わる気が無い人は変わりませんが、変わろうとする意志のある人は変わることができるということなのでしょう。コンビニでバイト中の中津のお客に対する接し方が、物語の冒頭とラストとで変わっていて興味深かったです。まさに生態系の破壊された、混沌とした現代社会の象徴とも言える“なごみ商店街”の中で、ヘタレ小市民・中津が立ち上がって少しだけ成長したのです。
ラストで「生活はどうだい?」と問われた中津が、「大丈夫です。相棒がいますから」と答えていたのも印象的でした。人は一人では生きていけません。生活を楽しく豊かなものにするためにも、人と人との絆は大切でしょう。
そういえば堂堂市ではヌートリアが大量発生し、全編をとおして街のいたるところに映り込んでいました。劇中の音楽やシャッター商店街のグラフィティも凝っていたりして、遊び心も満載でよかったです。
突っ込みどころは多々ありましたが、この作品の世界観からすれば気にすることではないでしょう。きっと誰にでもあるであろう、世の中の理不尽なことを叩き潰したいという願望をそのまま映像化したような感じで、バカバカしくぶっ飛んでいる側面もありましたが、意外と大事なことも盛り込まれていて不思議な魅力のある作品でした。

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