ドクター・ストレンジ (ベネディクト・カンバーバッチ)

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映画『ドクター・ストレンジ』(Doctor Strange)は、マーベル・コミックの同名のキャラクターをフィーチャーした実写映画化作品です。
ベネディクト・カンバーバッチは、ドクター・ストレンジことスティーヴン・ストレンジ役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
ニューヨークで暮らすスティーヴン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、数々の難易度の高い手術を成功してきた天才外科医だ。ある日、彼は自動車事故で両手の神経を損傷し、精密な指の動きができなくなってしまう。様々な治療法を試してみるものの回復せず、ついには手術を断られる始末。お金も尽き自暴自棄になって挙句の果てには、事故後も気に掛けて励ましてくれていた元同僚で友人の救命救急医クリスティーン・パーマー(レイチェル・マクアダムス)にきつくあたり、去られてしまう。そんな中、リハビリ担当医から下半身不随の状態から奇跡的に治癒した患者ジョナサン・パングボーン(ベンジャミン・ブラット)の存在を知らされる。パングボーンに会ってカトマンズにあるカマー・タージと呼ばれる施設の話を聞いたストレンジは、藁にもすがる思いでそこへ向かう。
カマー・タージになんとかたどり着いたストレンジは、謎めいた指導者エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)とその弟子モルド(キウェテル・イジョフォー)に会う。エンシェント・ワンの話を聞くものの要領を得ず、期待していた治療が受けられないと悟って食ってかかるストレンジだったが、エンシェント・ワンの魔術の力を目の当たりにしてその場で弟子入りを懇願する。しかしエンシェント・ワンは拒否する。なぜなら、ストレンジの傲慢なところがかつての弟子カエシリウス(マッツ・ミケルセン)と似ていたからだ。カエシリウスは闇の魔術に魅せられ、ダークサイドに落ちて狂信的な弟子たちを従え離反していた。モルドは、ストレンジこそカエシリウスに対抗するのに必要な人材であると説得。そのおかげもあって、ストレンジは受け入れてもらえて修行を受けることとなった。
過酷な修行のもと、研究と実践を重ねることでストレンジは人知を超えた力を手にしていく。やがて闇の魔術の存在を知り、アベンジャーズが物理的な脅威から世界を守る一方で、魔術師たちは魔法の脅威から世界を守らなければならないということを知らされる。そんな矢先、カエシリウスたちが攻め込んできて、ストレンジは壮絶な魔術の戦いに巻きこまれてゆくのだった…。
本作は、“マーベル・シネマティック・ユニバース(=MCU)”シリーズ第14作目の作品となります。同シリーズでは腕力やテクノロジーに依存した肉体的・物理的攻撃による戦闘がメインでしたが、本作では魔術という精神世界を扱っていて、これまでの物質世界での戦闘とは一味違って新鮮でした。
見どころはやはり、時間と空間の概念を超えた神秘の映像世界でしょう。序盤で、ストレンジがエンシェント・ワンと対面した際に体感させられる多元宇宙の縦横無尽な感覚も凄かったですし、戦闘シーンでミラー次元において展開される高層ビル群や街がねじ曲がり、折りたたまれ、分割されて変貌してゆく場面も圧巻でした。終盤で暗黒次元が垣間見られる破滅色の強い映像も、時間の巻き戻しの演出もあいまって見応えがありました。スコット・デリクソン監督は『マトリックス』や『インセプション』に影響を受けたと話しているそうですが、なるほどと頷けます。
敵を倒す方法に関しては賛否両論あるところでしょう。確かにストレンジはある魔術を使って活躍しますが、敵を倒す際には直接手を下すわけではありません。でも機転と工夫によって解決に導くところは独創的とも言え、伏線もしっかり張られていたのでよかったと思います。そしてなにより、主人公スティーヴン・ストレンジの再生物語としてよくできていると思いました。
エンドロール中とエンドロール後におまけ映像がありました。1つは、ストレンジがソー(クリス・ヘムズワース)と会っていて、ロキについて話をするシーンです。これは映画『マイティ・ソー』シリーズ第3作を示唆しているものと思われます。そしてもう1つは、モルドがパングボーンに会いに行って、魔術の力を奪って元の下半身不随の状態に戻してしまうというシーンでした。これは恐らく本作の続編への布石でしょう。本作でストレンジは、大善のために柔軟に対処して掟を破って自然の摂理に逆らいました。頭の固いモルドはそのことが納得いかず、袂を分かつことにしたのです。潔癖とも言えるモルドは、エンシェント・ワンのある秘密の行為が許せなかったのと、自由奔放で潜在能力の高いストレンジに対してある種の嫉妬心を抱いていた節があり、そのことも影響したのでしょう。今後モルドはストレンジと敵対するようになるのかもしれません。
MCUシリーズとしては、今年5月に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』(Guardians of the Galaxy Vol.2)が公開予定です。マーベル・コミック実写映画の今後の展開も楽しみです。