シンデレラ (リリー・ジェームズ)

lilyjames

映画『シンデレラ』(CINDERELLA)は、シャルル・ペローの同名童話を原作とするディズニーアニメを実写化した作品です。『ヘンリー五世』や『ハムレット』などのケネス・ブラナー監督がメガホンを取っています。
リリー・ジェームズは、シンデレラことエラ役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
遠い昔。エラという女の子が森のはずれの屋敷に住んでいた。エラと両親は心から愛し合って幸せに暮らしていた。
しかし母親(ヘイリー・アトウェル)は病に倒れ、エラにどんな試練にも負けない秘訣として「勇気と優しさを忘れないこと」を伝えて亡くなった。
時は経ち、悲しみが思い出に変わり始めた頃、父親(ベン・チャップリン)は再婚した。エラ(リリー・ジェームズ)は、継母のトレメイン夫人(ケイト・ブランシェット)とその連れ子である姉妹ドリゼラ(ソフィー・マクシェラ)、アナスタシア(ホリデイ・グレインジャー)と暮らすことになった。
そんな中、貿易商を営む父親は、海外へ仕事に行った。父親の留守中、それをいいことにトレメインはエラを屋根裏部屋に追いやる。
その後、さらにエラに不幸が襲う。父親が旅の途中で病気で亡くなったのだ。トレメインは経済的に困窮して使用人たちに暇を出す。トレメインと2人の姉はエラに辛く当たり、挙句の果てには召使いのように扱うようになる。エラは悲しみを忘れるためとして多くの家事・雑用を押し付けられ、食事も一緒にさせてもらえず残飯をあてがわれた。
屋根裏部屋は隙間風が入ってきて寒いため、エラはしばしば暖炉の前で暖を取りながら寝ていたが、灰で顔が汚れてしまい、姉たちから“シンデレラ(=灰だらけのエラ)”というあだ名をつけられて嘲笑される。
トレメインと姉たちからの仕打ちに耐えきれなくなったエラは、屋敷を飛び出して森に迷い込んだ。そこで狩りに興じる、キットと名乗る男性(リチャード・マッデン)と出会う。少しの会話しか交わさなかったが、2人は惹かれ合って再会の約束をする。
キットは実は国の王子だった。結婚をせかされていた王子は、通常お妃候補の王女のみ招くところを、国中の独身女性すべてを対象にして、城で舞踏会を開くことにした。それは森で出会った素性もわからないエラと再会するためだ。
舞踏会のことを知った姉たちは、王子に見初められるチャンスとして俄然張り切る。エラも森で出会った、城で働く見習いのキットと再会できるとして喜び、母親が大切にしていたドレスを仕立て直す。
ところが舞踏会当日。トレメインはエラの参加に反対し、ドレスを引きちぎる。さすがのエラも失意のどん底に陥って涙する。そこへ老婆が現れて物乞いをしてくる。エラが一杯の牛乳を差し出すと、「優しさですべてが変わる」として老婆の姿が変貌する。実は老婆は魔法使いのフェアリー・ゴッドマザー(ヘレナ・ボナム=カーター)だったのだ。
フェアリー・ゴッドマザーは、魔法で庭にあったカボチャを馬車に、トカゲとガチョウを従者に、ネズミたちを馬に、エラの破れたドレスを美しい青のドレスに変え、ガラスの靴も準備した。カボチャの馬車に乗ったエラは、「12時の鐘が鳴り終わったら魔法が解ける」という忠告を聞いて、舞踏会が開かれる城に向かうのだった…。
本作は、みんなが慣れ親しんでいるであろう、王道“シンデレラ”を見事に実写化していました。
映像として一番印象的だったのは、なんと言っても舞踏会のシーンです。舞踏会が開かれる大広間は、巨大シャンデリア17個、オイルキャンドル5000本、カーテン1820m分使用した豪華セットが組まれたそうです。王子とエラのダンスの場面は、その舞台の魅力も手伝って、華やかでロマンティックなシーンとなっていました。また、魔法が解けて、動物たちや馬車が元の姿に戻り始めるシーンも興奮しました。
そして、シンデレラのキャラクターも素晴らしかったです。シンデレラことエラは屋根裏部屋に追いやられても、そこで幸福を見出し、素敵な場所にしていこうと行動を起こしていきます。幸福とは環境に左右されるものではなく、自身の心の中にあるということを体現してみせてくれたのです。また、エラは母の教えである“勇気と優しさ”を端々でみせてくれます。興味深かったのは、『アナと雪の女王』ですっかりおなじみの“ありのままの自分”がラストでキーワードとして出てきたことです。魔法が解けて日常に戻った後、エラは唯一残っていた片方のガラスの靴もトレメインに壊され、一時はキットとの日々は遠い美しい思い出として割り切ろうとしました。何より、偽りのない本当の自分を愛してくれるかどうかが心配になってきたのです。しかしエラは、田舎の町娘で、王女でなく持参金もないありのままの自分を、勇気を出してキットの前でさらけ出しました。勇気で自ら道を切りひらいたのです。
そんなエラと対比的に描かれるのが継母のトレメインです。トレメインは、夫亡き後の暮らしを維持するべく、エラの父親と再婚したのです。行動こそ起こしていますがそれは誰かに依存するためのもので受け身的と言えるでしょう。一方、過酷な状況に置かれても信念を貫いて抗うエラは行動的とも言えます。トレメインは、若さや美貌はもちろんのこと、エラのそんな精神力にも嫉妬していたのかもしれません。強欲で冷酷で、でもどこか寂しさが漂うトレメインは、圧倒的な存在感を放っていました。

同時上映は、短編アニメーション『アナと雪の女王/エルサのサプライズ』でした。前作『アナと雪の女王』の数カ月後を描いた物語です。アナの誕生日に、エルサが風邪をひきながらも様々なサプライズを仕掛けて盛大にお祝いしようと張り切るお話になっていました。エルサのくしゃみから生まれる小さな雪だるま“スノーギース”がユニークで可愛らしかったですし、そんなスノーギースを自らの弟として扱い、世話を焼こうとするオラフも面白かったです。
ちなみに『アナと雪の女王』の長編の続編の製作も決定したそうです。気の早い話ですが今から楽しみです。