ベイマックス (Big Hero 6)

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映画『ベイマックス』(原題:Big Hero 6)は、マーベル・コミックの「ビッグ・ヒーロー・シックス(Big Hero 6)」を原案にしたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品です。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
幼い頃に両親を亡くしたヒロ・ハマダと兄のタダシは、母親代わりの叔母・キャスの家で暮らしている。ヒロは自分の才能を持て余し、非合法のロボット・ファイトに夢中になっていた。そんなヒロを見かねた兄のタダシは、ヒロを自身の所属する工科大学のラボへ連れていく。そこでケアロボットのベイマックスをはじめ数多くの発明研究を目にして刺激を受けたヒロは、科学の夢を追究するために飛び入り入学を決意する。
大学へ入学するためには、大学の研究発表会でロボット工学の第一人者でありタダシの恩師でもあるロバート・キャラハン教授をうならせるほど独創的な研究の発表をしなければならない。ヒロは、タダシから「見方を変える」というアドバイスをもらって、タダシや彼のラボの仲間たちの協力の元、研究に励んだ。
そして迎えた研究発表会。ヒロが披露したのは、大量の指先サイズの“マイクロボット”を頭部に装着した神経トランスミッターで操り、その集合体で思うままの物体を形成する発明だった。拍手喝采を浴び、ヒロはキャラハン教授から直々に大学合格を言い渡される。その後、外でヒロがタダシに感謝の言葉を述べる中、会場内で火災事故が発生する。タダシは、キャラハン教授を助けようとして燃え盛る建物の中へ入っていき、帰らぬ人となってしまう。
最愛の兄を失ったヒロは、叔母・キャスやラボの仲間たちの慰めや励ましの言葉もむなしく、心を閉ざしたままだった。そんなある日、物を落として足のつま先にぶつけて痛がるヒロの前に、タダシが生前、最後に作った人々の心と体を守るケアロボットであるベイマックスが起動する。ベイマックスはヒロの症状を“思春期”と診断。そんな時、ヒロは、火災事故を免れた一片のマイクロボットを発見し、それが集合体になろうとしているかのような反応を示していることに気づく。他のマイクロボットはすべて焼失してしまっていて、起こり得ない現象だ。ベイマックスは、ヒロの元気を取り戻すために、ヒロが気になっているマイクロボットの反応する行き先を突き止めようと街へ飛び出してしまう。慌ててヒロも追いかけていき、彼らがたどり着いた先には、なぜかマイクロボットの生産工場があり、マイクロボットが大量に作られていた。さらに謎のマスクの男が現れ、それらのマイクロボットを操ってヒロたちを襲うのだった…。
ヒロは兄・タダシの命を奪った火災事故の原因に疑問を持ち、その真相を突き止めるために、ベイマックスを戦闘用にバージョンアップし、ラボの仲間たちと協力してマスクの男に立ち向かいます。
日本における宣伝にあるような、タダシとヒロの兄弟の絆、大きな悲しみを抱えたヒロとそんなヒロを一途にケアするベイマックスの友情のような関係ももちろん描かれていますが、ヒーロー活劇といった要素も強く、アクションシーンが凄かったです。それもそのはず、かなり改変はあるものの、一応原作は『スパイダーマン』『X-MEN』『アイアンマン』等で知られるマーベルです。
でもマーベル色を放ちつつも、ディズニー作品らしさもきちんと出ていました。それは、大きな括りで言えば“愛”がテーマになっていたように感じられた点です。ヒロとマスクの男を突き動かした悲しみや怒りは、そもそも愛あるゆえにわき上がった感情であり、その心の整理をする方向が正しいのか間違っているのかがヒーローと敵の分かれ道になったのです。ヒロもまた、間違った方向に進みそうになりましたが、タダシの思いやラボの仲間たちが正しい方向へと導いてくれました。憎しみからは何も生まれないということに気づいたヒロは、単純に悪を倒して終わらせるという選択はしませんでした。最終的にヒロは「たくさんの人を助けたい」という兄・タダシの思いを胸に歩み出します。そんなヒロの成長物語としてもよくできていました。
演出的な話で言えば、グータッチや「ベイマックス、もう大丈夫だよ」の言葉の使い方が見事でしたし、ヒロが復讐心に囚われた際に効果的に使われたデータカードが、ラストの伏線にもなっていたところも感心しました。また、敵を倒すシーンでもタダシの言葉等が効果的に使われていて、ベタながら素晴らしかったです。
マーベル映画ではカメオ出演でおなじみのスタン・リーが、なんとアニメである本作でも出演を果たしています。それに絡んだ形でエンドロール後にもおまけ映像がございますので、劇場でご覧になる方はお見逃しのないようお気をつけください。

同時上映は、短編アニメーション『愛犬とごちそう』でした。『塔の上のラプンツェル』『シュガー・ラッシュ』そして本作『ベイマックス』にも参加したスゴ腕のアニメーターであるパトリック・オズボーンが初監督を務めた作品です。ある男性の愛犬のウィンストンは、その飼い主の男性と食べ物を分かち合いながら暮していたが、男性が恋に落ちてからウィンストンの食事の時間は一変してしまう。やがて男女の恋に様々な局面が訪れ、ウィンストンは意外な行動に出るというお話です。人間と犬の友情、男女の恋模様が“食事”を通して描き出されていました。ウィンストンの表情や仕草が愛らしかったです。