劇場版 ATARU (中居正広さん & 堀北真希さん)

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『劇場版 ATARU THE FIRST LOVE & THE LAST KILL』は、TBS系列にて放送されたテレビドラマ『ATARU』の劇場版作品かつ続編です。
テレビ版に続き中居正広さんはチョコザイことアタル(猪口在)役で、堀北真希さんはアレッサンドロ・カロリナ・マドカ 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
警視庁の管轄で、コンピュータウィルスによる鉄道の送電線破裂事件が発生する。時を同じくして、アタル(中居正広さん)やラリー井上(村上弘明さん)が所属するニューヨークのFBI組織でも、同じ手口による爆破事件が発生する。
警視庁では、車椅子の女性管理官・星秋穂(松雪泰子さん)を中心に捜査本部を設置。送電線破裂事件は、出所したばかりの犯罪者を狙った殺人未遂事件であるとにらむ。そんな中、ラリー率いるFBI捜査チームも捜査に合流する。そこにはアタルの姿もあった。“ウィザード”と呼ばれるコンピュータウィルスが使われたことから、容疑者としてその生みの親であるアレッサンドロ・カロリナ・マドカ(堀北真希さん)の名前が浮上。マドカはアタルと同じサヴァン症候群に似た能力を持ったため、かつてFBIの「SPB(サヴァン・プログラム・ブランチ)」というプロジェクトで、アタルと共に犯罪捜査のトレーニングを受けていたことがあった。
沢俊一(北村一輝さん)や蛯名舞子(栗山千明さん)と再会を果たし、捜査に加わることになったアタルだったが、捜査を進めるにつれ、浮かび上がる証拠はアタルを犯人とするものだった…。
生まれながらにしてサヴァン症候群に起因する特殊能力を持ったアタル。その特別な能力をラリーに見出されて訓練されてFBI捜査官となったアタルが、日本で刑事である沢や舞子と出会い、数々の難事件に関わって解決に導く姿がテレビドラマ版では描かれました。本作はその続編で、テレビドラマ版を知らないとわからない描写もあります。例えば、舞子の父・達夫(利重剛さん)が15年ぶりに車を買ったという何気ない事柄にも、実は舞子の母で達夫の妻である真理子(奥貫薫さん)の死の悲しみを乗り越えたということを意味していて、それはアタルのおかげで真理子が自殺ではなく事故で亡くなったということが明らかになったからなのです。本作で、真実を知ることを怖がっている舞子の気持ちを達夫が察するという場面がありますが、それもそうした背景があります。また、舞子が刑事を辞める道を選び、事件性のない「捨て山」と呼ばれる事件を調査する「捨て山探偵社」を設立するに至った過程もテレビドラマ版で描かれています。したがって、テレビドラマ版を踏まえて観れば、より楽しめるでしょう。
テレビドラマ版同様、小ネタが満載でした。ドラマ『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』の当麻と瀬文らしき人物がちらっと映っていたり、テレビドラマ版のコロコロコロッケやボンボンメンチのいわば発展版であるコロコロコロッケパンやボンボンメンチパン、そして木のケースに入ったコロコロコロッケPREMIUMが登場したりしていました。自分大好きの沢が、自分の顔が入った目覚まし時計や抱き枕を使っていたのも面白かったです。
本作では、アタルの心の原点ともいえるエピソードが登場します。昔、アタルの魂がマドカによって黒く染められていくことを恐れたラリーは、マドカをFBIから追放して2人を引き離しました。それが本作の事件へと発展するのです。マドカの育ての親であるシスターのアリーニ・マツバラ(前田美波里さん)の「人は愛する人と切り離されるたびに、心を失っていくのです」というセリフが印象的でした。
テレビドラマ版では、家族の人数と同じである4つの花を付けた白いユリが重要な役割を果たしますが、本作でも同じように白いユリの花が重要な意味合いを持ちます。5年前、マドカが捕まる際に現場に駆けつけたアタルが、マドカにユリの花を必死に渡そうとする場面が印象的でした。そして、物語のラストでロサンゼルス市内ルート66の道路いっぱいにアタルがユリの花を並べる場面は感動的でした。
赤ん坊の頃に教会に置き去りにされたという過去を持つマドカに、アリーニ・マツバラは「この世にいるのは悪い大人ばかりじゃない。悪い大人には神様から罰が与えられるのよ」と説いていました。でも残念ながらその教えは歪んで解釈され、マドカは「罪深き大人は罰せられなくてはならない」という考え方にとらわれます。もし、ラリーがアリーニ・マツバラからマドカを引き離さなければ、アリーニ・マツバラの思いはマドカに正しく伝わったのかもしれません。沢が舞子に話した「きっと人には、ラリーのように能力を伸ばす人だけではなく、心をのばす人が必要なのだろう」というセリフが印象的でした。ラリーは「アタルに善悪の区別はありません」と言っていました。しかし、アタルには父・誠(市村正親さん)、母・ゆり子(原日出子さん)、弟・介(岡田将生さん)たち家族、そして、舞子や沢もいます。ラリーが思う以上にアタルは日本でチョコザイとして心をのばしたのかもしれません。それだけに、ラストのアタルの気持ちが察せられて切なかったです。