アンダルシア 女神の報復 (織田裕二さん)

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映画『アンダルシア 女神の報復』は、映画『アマルフィ 女神の報酬』、連続テレビドラマ『外交官 黒田康作』に続く、織田裕二さん演じる黒田康作シリーズ劇場版第2弾となる作品です。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
外交官・黒田康作(織田裕二さん)はパリで開催される国際会議・G20の準備でパリに訪れていた。一方、スペイン北部に隣接する小国・アンドラで、日本人投資家・川島直樹(谷原章介さん)の遺体が発見された。そこで事態を把握すべく調査を命じられた黒田は、2人の事件関係者と出会った。1人は遺体の第一発見者である銀行行員・新藤結花(黒木メイサさん)、もう1人は事件の担当者であるインターポール捜査官・神足誠(伊藤英明さん)だ。結花は何かに怯えた様子で多くを語らず、神足は必要以上に捜査情報を隠そうとする。
黒田は結花を保護するためにバルセロナの日本領事館へ連れて行く。そこには外交官に昇進した安達香苗(戸田恵梨香さん)が駐在していた。しかし、結花は安達の目を盗み、日本領事館から出て行ってしまう。黒田と、ある思惑があって結花を保護しようとする神足はそれぞれ結花を追いかけて鉢合わせする。2人は衝突し、結局黒田同行のもと神足が保護することになるが、そんな中、3人は正体不明の武装グループから襲撃を受ける。
黒田は事件には何か裏があると確信し、ジャーナリスト・佐伯章悟(福山雅治さん)に情報を提供してもらいながら調査を進めるのだった…。
国際テロから邦人を守るため、世界各国の赴任地で極秘任務を遂行する外交官の活躍を描く黒田康作シリーズ。今作はスペインを舞台に、サスペンスフルな話の展開になっていて、そこへ人間ドラマ、アクションなどの要素が織り込まれていました。物語の根底は三つ巴の心理戦です。いわば騙し合いが繰り広げられる人間ドラマになっていて、渦中にいる黒田がどうやって事件を解決していくのかが見どころの1つとなっています。結花と神足はそれぞれ過去の事件をきっかけにして心に闇を抱えているのですが、それが投資家・川島の死亡事件にどう影響しているのかも見ものです。相変わらず黒田はクールでミステリアスなのですが、今回は少しだけ人間くささも出ています。それは織田さんもおっしゃっているように、今回の黒田の相手が一般人ではなくそれぞれの道のプロだということが影響しているのでしょう。
今回、黒田が挑むのは単なる投資家死亡事件ではなく、その背景に資金洗浄(マネーロンダリング)が複雑に絡み合っていて、二転三転するストーリー展開になっています。丁寧に伏線が張られているのは良かったのですが、人によっては先の展開が予想できてしまい、面白味に欠けてしまう場合もあるでしょう。私もその口で少し残念でした。
とは言え、カーアクションや銃撃戦のシーンは迫力がありましたし、前作同様今作でもロケ地の美しい景色も見応えがありました。緊張感あるシリアスなシーンの中にも、黒田と新米外交官・安達の掛け合いやジャーナリスト・佐伯の女たらしの場面など、少しユーモラスなシーンも盛り込まれていて、メリハリがあって良かったです。そして、やはり黒田が神足、結花に影響を与えていくところが良かったです。例えば、組織を選ぶか捜査官としての正義を貫くかで悩んでいる神足に、黒田は「ちゃんと目を開けて歩いてないと、何が正義かもわからなくなる」といったカッコいい言葉をさらっと言います。黒田は、神足や結花が抱えているトラウマを理解した上で、押し付けや説教にならない形で良い方向へと導いていくのです。連続テレビドラマ『外交官 黒田康作』で明かされたように、自身もトラウマを抱えながら生きてきたので人の痛みがわかるのでしょう。
一応今作がシリーズの完結編とのことらしいですが、またスペシャルドラマなどで黒田とは再会したいものです。