時をかける少女 (仲里依紗さん)

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仲里依紗さんは、筒井康隆原作の小説『時をかける少女』の続編的な位置づけで映画化された同名映画に芳山あかり 役で出演しています。
先日、劇場に観に行きました。
●導入部のあらすじと感想
芳山あかり(仲里依紗さん)の父親はあかりが生まれてまもなく家を出て行ってしまったため、あかりは、母の和子(安田成美さん)とずっと二人暮らしで、父のことはほとんど知らない。高校卒業を目前に控えたあかりは、和子が薬学者として勤めている大学に無事合格し、新たな生活に胸を躍らせていた。
そんな中、和子は、古くからの知り合いである酒屋の主人・浅倉吾朗(勝村政信さん)から、深町家の老夫婦の家から出てきたという1枚の写真とラベンダーの花の入った封筒を手渡された。その写真は和子の中学時代のものだったが、一緒に写っている少年に2人は心当たりがなかった。その矢先、和子は交通事故に遭ってしまう。
外傷は大したことはなかったものの、意識が戻らない和子。あかりが病院に駆けつけると、和子は一時的に意識を取り戻し、1972年4月の土曜日の中学校の理科実験室に行って、深町一夫という人に会って、伝えなければならないことがあると必死に訴える。あかりは取り乱す和子を制止するため、代わりに自分が行って伝えてくると約束。あかりは、和子から言われたように、和子が開発した薬を飲んだところ、時空を飛び越えて過去に行くことに成功した。
ところが、1972年の4月ではなく、間違えて1974年の2月と念じてしまったため、あかりは、母から指定された日時から2年も経過した時代に飛んでしまい、到着した場所も、中学校の理科実験室ではなく大学の教室だった。たまたまそこにいた映画監督志望の大学生・溝呂木涼太(中尾明慶さん)の頭上に落下したあかりは、成り行きで涼太の下宿で世話になることとなる。涼太はSFファンで、2010年の未来から人に会いに来たというあかりの説明を受け入れ、一緒に深町一夫探しの手伝いをしてくれる。あかりも涼太の映画作りを手伝い、やがて涼太にほのかな想いを抱き始めるのだった…。
原作では芳山和子が主人公ですが、本作は和子の一人娘のあかりが主人公で、新たな少女の物語として描かれています。あかりを演じたのは、2006年の細田守監督のアニメーション版で主人公の声を務めた仲里依紗さんです。大林宣彦監督による1983年版で主人公・和子を演じた原田知世さんの、もの静かでお嬢様のような雰囲気のヒロイン像とは打って変わって、和子の娘・あかりは元気いっぱいで少しガサツな現代っ子です。仲里依紗さんはそんなあかりをみずみずしくとても魅力的に演じていました。
物語の結末には賛否両論あるでしょう。状況説明、動機、伏線の提示の仕方なども脚本的に少々粗さを感じます。でも、タイムリープにおいてのタブーを破らないようにするためには、あの結末も仕方がなかったことでしょうし、「記憶は消えても、想いは消せない」といった『時をかける少女』共通の切なさはよく表現されていたと思います。やり直しのきかない1度きりの人生だからこそ、人は泣いたり笑ったり、傷ついたり愛しかったりするのかもしれません。そんな“時”を大切に生きなければと思いました。また、あかりと涼太の姿を見て、いつの時代も、相手を想う純粋な気持ちは変わらないものなのだと改めて感じました。
随所に1983年版の大林監督へのオマージュを感じるシーンがあり、どこか懐かしい香りが漂っている点も良かったです。いきものがかりが名曲「時をかける少女」をカバーした曲も、あかりのイメージにぴったりで大好きです。